節操無し書架

□繕い物。
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「不思議なヤツだ…」
破れた靴下やパンツを繕って着る程の節約家のクセに、菓子を作る材料には高級品を惜し気もなく取り寄せる。
そんなオーストリアの金銭感覚が、ドイツには未だ理解出来ない。

「どこが不思議なのです?」

怪訝そうにするドイツをむしろ理解出来ないというように、オーストリアが首を傾げる。

「新しい下着を買うことは勿体無くて、贅沢な材料でケーキを作ることは勿体無くないのか?」
そう訊くと、オーストリアは愚問だと言わんばかりにため息を吐き、
「下着は繕えばその機能を果たしますが、お菓子は美味しくなければ作る意味が無いでしょう」
子どもに言い聞かせるように答えた。
一理有る、と思いながらもドイツは反駁する。
「しかし、継ぎ接ぎの下着を何かの折に見られたら、みっともないだろう」
すると、オーストリアの眼鏡の奥で紫色の瞳が妖しく光った。
「何かの折…とは」
立ち上がり、ドイツの座っているソファーに近付く。
「おい、」
戸惑い見上げて何か言おうとしたドイツの唇に人差し指を押し当てて言葉を塞ぎ、耳元に唇を寄せて
「こういった折でしょうか」
と囁いた。
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