東城大学病院

□独占欲と言うより、激情。
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気が遠くなる。
どのくらいの時間が経ったのだろう。田口は朧気な意識の中で、男の端正な顔を見上げた。こんな薄暗い部屋で、中年男の身体を犯すという、正気の沙汰とは思えない行為に没頭しているというのに、加納は常と変わらぬ、少しシニカルで精悍な美貌を保っている。対して、自分がどれだけだらしない顔をしていることか、想像したくもない。
揺さぶられる度に、頭上で金属音がする。
生まれて初めて掛けられた、恐らく大半の日本人が一生掛けられることなく終るであろうもの…手錠。
往生際悪く、診察室での性交に抵抗を示した田口に「強姦されたってことにしとけば、職業意識から来る良心の呵責は軽減されるだろう」という訳の分からない理屈を付けて、加納が取り出したのがコレだった。そっちこそ職業的良心が痛まないのかと責めてみたが、見事なまでにノーダメージ。
「…っう、かの…さん、」
「どうした?先生」
「早く、済ませる…て、言った、のに」
「悪いな、オッサンだからしつこいんだよ」
悪びれもせず言ってのける男を睨むが、
「そんな顔するなよ。余計に興奮する」
田口の睨み如きが功を成す相手ではなかった。
口元に笑みすら浮かべて、加納は田口の素肌に手を滑らせる。腰骨の窪みから、脇腹、肋骨のライン、胸元。
「あっ!…やァ…っ」
胸の突起を指が掠めて、田口は堪えきれず甘い声を漏らした。
「いい声だ」
味を占めた加納は指先の愛撫を続けながら、もう片方の突起に舌を這わせた。
「アアッ…ふ…あ、やめ…っ」
身を捩らせると手錠がジャラジャラと音を立てる。乳首に吸い付きながら加納がわざと立てている下品な音と相まって、田口の聴覚までもを犯す。
「…なあ先生。あんたのイイ所、全部教えてくれよ」
低く響く声に身震いする。
「…そんなの、知らな…ッ」
「嘘つきだな。…まずは、ココだろ」
長い指で乳首を摘まむと、田口の身体がビクリと痙攣した。
「それから…ココ」
「ひあぁッ!」
結合していた部分を引き抜き、奥の一点に目掛けて一気に貫く。
田口は背を反らせて高い声を上げた。
「他には?…答えてくれないなら、分かってる所だけ攻めるしかないな」
「そんな…!だって、分か…ッない…あ、いやあアアッ」
肉のぶつかる音が響く程に激しく攻め立てられて、田口の意識が白い混沌に溺れていく。重りのついた不自由な手を持ち上げ、加納のはだけたシャツを掴む。すがり付くように、懇願するように。
「ひぁッ…っぅ!か、のうさ…ダメ、もう、無理…っ!」
「何だ、尻だけでイクのか?淫乱だな、先生」
「や…そんな、言わないで…」
「いいじゃねえか、淫乱でも。ホラ、遠慮しないで、イケよ…!」
加納は田口の脚を掴んで大きく開かせ、限界まで猛った己の雄を深く激しく叩き付けた。
「アアッ!ダメ、っはあ…ッぁああ!!」
掠れた淫らな叫びを残して、田口は意識を手放していた。
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