魔人探偵

□愛玩動物、その絶望。
2ページ/4ページ

もうどのくらいの時間、続いていたのだろう。
獣達の饗宴。
浅い呼吸と粘着質な水音、そして肉のぶつかる下品な音。下卑た笑い、汗と精液と血の落ちた冷たい床。
饗宴―狂宴。
その贄として傷だらけの身体を饕られている痩せた男は、もはや精神力だけでその苦痛に耐えていた。
贄、と言ってもそれは獣達に捧げられたものではない。
「笹塚刑事、目を開けなさい」
絶対君主。
笹塚の身体も、其を犯す獣じみた男達すらも、何もかも此処では彼の為に存在を許されている物なのだ。
「シックス…!」
「ほう、まだそんな目が出来るのか。いいね。益々気に入ったよ」
笹塚を背後から犯していた男が、薄く骨の浮いた腰を荒々しく両手で掴み、自らの腰を激しく打ち付けた。
「ぐぁっ…!」
「ほら、シックス様が退屈しているだろう。もっと鳴けよ」
何度も手放しかけた意識を必死に掴んで、笹塚は背後の男を睨んだ。
「何だその目。…おい、クスリ追加だ!女みたいにヒイヒイ言って腰振るまでやってやる」
「っ…やめろ…」
笹塚の右腕の肘裏にはすでに針の跡。
「こいつクスリが効きにくいみたいだからな。…身体だけは反応してるクセに、態度は全く変わらねえ」
セックスドラッグを静脈に打ち込まれて、笹塚の全身は焼ける様に熱く、そして些細な刺激にも反応する程敏感になっていた。
常人なら、既に正気を保ってはいられない状態だ。
男が再び笹塚の身体を揺さぶり、前立腺を抉るように肉棒を何度も叩き付けた。
「ッ…ぐっ…ぅ!」
熱く液体を滲ませて立ち上がっている笹塚の性器を乱暴に掴み、上下に扱く。
「ぅ…やめ、…っぅあぁッ!」
堪えきれず、男の手の中に吐精した。
「手ェ汚しやがって。…舐めろよ」
男は笹塚の口元に精液に濡れた手を押し付けた。息を止めて顔を逸らそうとするが叶わず、自らの精液の付いた指を口内に突っ込まれる。
その指を噛むと、男は激昂して笹塚の顔を殴った。
「つまらないね」
唐突に、シックスが口を開いた。
男は慌てた様子で、笹塚の髪を掴んだ。
「ほら、もっと乱れて見せろよ。でなきゃ、泣き叫んで許しを乞え」
「分からないかね」
支配者は手をかざし、冷たく言い放つ。
「お前達では役者不足だと言っているんだ」
何が起きたのか。
繋がっていた男が、周りに居た男達が、一瞬で黒焦げになり崩れて行く様を、笹塚は悲鳴を上げる事も出来ず凍り付いた眼に映していた。
ギリギリの均衡を保っていた精神が、この時初めて崩れ始めた。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ