魔人探偵

□君が先に眠るまで。
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「流すとこか突っ込むとこか迷ったんだけど」
「…流すとこだったんじゃねーのか、そりゃ」
「そうした方が良かったんなら、忘れて」
本当に、何でもないことの様に言う。吾代は相手の真意を読み取ろうと目を見詰めるが、色素の薄い目をいくら見ても何も読み取れない。
発する言葉が定まらないまま、何か答えなくてはと口を開けた時、茶色い目が一瞬笑った様に見えた。
「っ!?」
突然、下半身に甘い刺激が与えられて目を見開いた。
「あんた血の気多いから、入院生活で溜まってんだろ。だからヒトの体温に反応して誤作動起こしたんだ」
寝間着越しに、笹塚の手が固くなっていた中心に触れていた。
「…誘ってんのか」
「さあ?」
「テメー、何がしたいのか訳わかんねー。からかってるだけなら止めといた方がいいぜ」
「…どうかな。実際俺もよく分かってないんだけど…、ただ、あんたの体温は気持ちいい」
抑揚の無い口調が頼りな気で、思わず吾代は笹塚を抱き締めた。
「…傷、開くんじゃない?」
「うるせー…テメーが悪い」
「責任取れないから」
「いらねーよ。それより」
耳の下の柔らかい肌をきつく吸った。
「ッ!」
ビクッと震えた笹塚が、反射的に吾代の寝間着の背を掴む。
予想外に敏感な反応に、吾代は益々興奮した。
「ひとつ、訂正するぞ」
「…?」
「誤作動じゃねえ。テメーだから勃ったんだ」
そう言って吾代は笹塚に覆い被さり、薄い唇を噛み付くように奪い口内を蹂躙しながら、ワイシャツのボタンに手を掛けた。



これはもしかして夢の続きなのではないだろうか。
笹塚の肌に溺れながら、沸騰する意識の片隅にほんの少し残った冷静な部分で、吾代は考えた。
まず、笹塚の肌があまりにも心地よい。三十路男でしかも食事、睡眠共に酷い生活だ。どれだけガサガサでも驚かない。しかし今手に触れる肌は、吾代が心に浮かべては掻き消した夢想の肌よりさらに甘い。
そして
「…っは…!それ、も…やめろ…ッんぅ」
淡白そうなこの男の、予想外の感度の良さ。吾代の愛撫一つ一つに身を震わせて抑えた喘ぎを漏らす。
まさか演技か?等という考えも頭を過らないではなかったが、そんなことをするヤツには到底思えないし、何より笹塚の体の中心で硬くなっているものが本物の快楽を証明していた。
「テメーで誘っといてもう降参か?おまわり。それとも、早くこっちに欲しいって?」
そう言って秘孔に触れると、
「うあっ…!」
笹塚が激しく背を震わせて吾代にしがみついた。
思わず、吾代が生唾を飲んだ。
「…やべえよ、その声。俺が持たねえ」
濡れない孔に張りつめた自身の先端を押し当てると、笹塚はその熱さに震えた。
「ぁっ…馬鹿!ちょ…待て」
少し焦った様に、吾代の体を押し返す。
「馬鹿じゃねー。名前くらい覚えやがれ」
「…吾代」
吐息混じりに呼ぶ声と微かに潤んだ薄い色の瞳。吾代の興奮は際限無く昂って行く。
「…んだよ」
暴走しそうな熱をギリギリで抑えて、問い返した吾代に、笹塚の言葉は余りにも残酷だった。
「無理。そんなデカイの、入んねー」
「…………………はあ!!!???」
デカイと言われてショックを受けることも珍しい。尤も、この場合ショックのポイントはデカイと言われたことそのものでは無いのだが。
「馬鹿、声大き…」
「無理って何だテメー!ここでお預けって、そりゃこっちが無理だぞ!?」
「だってソレ、明らかに入んないだろ。口で抜いてやるから」
吾代は一瞬、己の分身をくわえて息苦しそうに眉を寄せる笹塚の顔を想像して、更に下半身を成長させてしまった。
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