節操無し書架

□少年アルフレッドの悩み。
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※デリケートなジャンルです。閲覧は自己責任でお願いします。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

港に大きな船が着いたと報せがあった。聞くと、期待通り、イギリス船だった。

大急ぎでリビングを片付け、もてなしの準備をした。紅茶はきっとアーサーがお土産に持って来たのを淹れてくれるから、綺麗なカップと甘いクッキーを並べておく。今か今かと待っていたら、待ち焦がれたアーサーの声が聞こえた。アルフレッドの顔が喜びに輝く。
だが、すぐに不審に気付く。アーサーの話し声が、共の者に対するそれと異なることに気付いたのだ。
「てめえ、くれぐれもアルに変なこと吹き込むんじゃねえぞ!」
それどころか、アーサーのこんな乱暴な口調は聞いたことがない。アルフレッドにはいつも優しく、時に厳しく叱る時にもきちんとした言葉で、部下達に対しても紳士らしさを常に持って接していて…そんなアーサーが粗雑な口をきく相手など…
「あ」
思い出した。一人、居た。アルフレッドの兄の座を争っていた相手。
「余計なこと言ったらまた100年フルボッコだからな!」
「はいはい分かってるって〜」
そして玄関のノッカーが響いた。
アーサーとフランシスから争うようにたくさんのお土産を貰い、フランシスの手作りだというケーキとアーサーの紅茶。アルフレッドは幸せいっぱいだ。
「アルフレッド、アーサーは口煩いだろう、嫌になったらいつでもお兄さんとこの子になっちゃいなよ」
「黙れ髭。アル、そんなヤツの言うこと聞かなくていいからな」
フランシスに向けてとアルフレッドに向けてで恐ろしく声が変わるアーサーに戸惑う。優しい笑顔を向けられるのは嬉しいけど、自分を小さな子どものように扱うアーサーに複雑な気持も湧いてくる。
そうだ、
と、ふと思い付いたことがある。
誰かに相談したいけれど、唯一の相談相手であるアーサーには言えないこと。
フランシスが適任ではないだろうか。
アルフレッドは密かに、決意した。
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