節操無し書架

□旧拍手文〈火アリ〉
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「やべえな、遅刻だ」
火村兎が駆けていると、木陰に一人のが少年がいました。
少年は、兎が服を着て喋りながら走るという怪現象が目の前で繰り広げられていることに気付きもせず、何かを書く作業に没頭しています。
その表情があまりにも真剣で、しかもとても可愛い少年だったので、兎は思わず足を止め、少年に近付きました。
見ると、少年が書いているのは小説でした。兎はそれを読み始めました。
数十分後。
「…ん?…うわっ!何や君!?兎か?兎なんか?」
少年の手元を覗き込んでいた兎に気付き、少年はびっくり。
「ああ。悪かったな、邪魔して」
「喋った!君、喋れるんか!?」
「日本語と英語なら」
「凄いな!バイリンガルやないか!」
「どうも。ところで、この続きはどうなるんだ?」
兎にそう訊かれると少年は嬉しくなり、満面の笑顔で
「あっと驚く結末が待ってるんや」
と答えました。
その笑顔に兎は一瞬で恋に堕ちました。
「…気になるな」
「ほんまか?」
兎はニヤリと笑って、言いました。
「アブソルートリー」

少年と兎はとても仲良くなり、兎は学会のことを完全に忘れ去って、そのまま少年と一緒に暮らしましたとさ。

end.

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