京極・巷説の部屋

□拍手文〈エイプリルフール編〉
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「四月馬鹿?」
「そう!今日は嘘を吐く日だそうだ。だから京極堂、僕を騙せ!」
嵐の様にやって来て、笑いながら奇妙な事を言う。
「騙せと言われて騙せる筈が無いでしょうが。大体、榎さんに嘘を吐いてもばれてしまうに決まっている」
「そう、僕は何でもお見通しだ!」
馬鹿みたいな高笑いをして、中禅寺にぴったりくっついて座る。
「だから、僕を騙せるとしたらお前くらいだろう」
本を読む中禅寺の顔を覗き込む。
「聞いているのか?本馬鹿本屋」
「…榎さん、悪いが邪魔なんだ。帰ってくれないか」
「お前が僕を騙してくれたら、邪魔しないぞ」
「……」
「おい」
「……」
「何とか言えよ、京極堂」
「……」
「馬鹿と言われて怒ったのか?」
「…何度も言わせないでくれ。邪魔なんだ」
「……そうか」
長い睫毛を伏せた。
「邪魔して、悪かった」
部屋を出ようとした背中を
「榎さん」
呼び止めた。
「…何処へ行くんですか。嘘を吐けと云うから吐いたのに」
「…中禅寺!」
みるみる笑顔になって、榎木津はガバッと中禅寺を抱き締めた。
「鬱陶しい」
「ははは、この嘘吐き!」
榎木津があまり嬉しそうに笑うから、つられて中禅寺も笑ってしまった。

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