東城大学病院

□拍手その三
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この日、田口は兵藤と二人でデパートに来ていた。買い物の用事がある、と何の気なしに話したのを兵藤が覚えていてオフを調整して付いて来たのだ。殆どストーカーの域だが、実害は無いし、まあいいかと好きにさせていた。
「先輩、買い物もういいんですか?」
「ああ、用事は済んだ」
「じゃあちょっと付き合って下さい!」
そう言って兵藤が田口を連れて行ったのは、ペットショップ。
「見て下さい、こいつ!先輩に似てません?」
ミニウサギのゲージの前で、兵藤が一羽の兎を指差した。
それは、活発に動く他の兎の中で一羽だけじっとしている白兎。
「…どういう所が?」
「ちょっと眠そうな所とか、他の兎につつかれても動じない所とか、餌取られてるのに空気噛んでモグモグしてる所とか…」
「待て。俺は空気噛んでモグモグしたことはないぞ」
「イメージですよ。先輩近々、霞食べて生きれるように成りますから」
「成らない!」
再度兎達に目をやると、白兎に寄り添って毛繕いをする茶色い兎が目に入った。
ノーリアクションの白兎にもめげずにせっせと毛繕いする様に、じゃあこいつが兵藤かな、と思い付いたが、言うとまた騒ぎそうなので黙っておいた。

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