東城大学病院

□緊張と寛ぎの間に。
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「先輩、やっぱりやめましょう。慣れないことは…」
「今更何言ってるんだ。大丈夫だ、俺を信じろ」
「男前なこと言ってるけど、何か震えてません?」
「震えてない。じゃあ、入れるぞ」
「え、いきなりですか?心の準備が…」
「何言ってるんだ、準備なら充分しただろ。大体、やって欲しいって言ったのはお前の方だろ」
「それはそうですけど、まさか先輩がそんなにノって来るとは…」
「悪いか?本当は、前から少しやってみたかったんだ」
「…それは、俺に、ですか?それとも…」
「じゃ、いくぞ」
「ストップストップ!!先輩酷い!明らかに俺、練習台じゃないですか!」
「馬鹿、練習台なんかじゃない」
「…先輩、じゃあ」
「実験台だ」
「より悪いわ!!…ってうわああ!」
「動くな、怪我するぞ」
「…ッ、そんな、いきなり奥まで」
「大丈夫だから」
「…先輩」
「多分」
「やめてええぇぇ!!!」

数分後

「…生きた心地がしませんでした」
「大袈裟だな。大丈夫だっただろ。ほら、沢山取れた」
「あ、本当だ。いや、耳かき人にしてもらうの久しぶりでした」
「するのも結構楽しいもんだな」
「凄い緊張感でした…」
「すまなかったな、怖い思いさせて」
「…いえ。先輩がしたいなら、またしてもいいですよ」
「そうだな、またそのうち。ありがとう、兵藤」

―――その微笑のために、この身の全てを捧げても惜しくない。そんな風に思う俺はきっと相当…重症だ。

end.

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