東城大学病院

□てのひら舞踏。
1ページ/3ページ

薄暗い部屋に、衣擦れの音が響く。
兵藤の部屋は新しい割に防音が弱い。隣の物音が時折微かに聞こえるのに気付いて、田口はいつも以上に声を抑えていた。
兵藤が首筋や胸に口付けを落とす度に、震える肩。下唇を噛んで耐える顔が、堪らなく欲情を誘う。
「先輩、声聞かせて下さいよ」
「…嫌だ。隣に、聞こえ…っ」
口を開けた隙に強引にキスをする。舌を差し込み、口内を調べるように擽った。
「んんっ!…んぅ…ッはあっ、バカ、ひょうど…」
「酷いなあ。バカはないでしょう」
軽く唇を合わせると、また身を震わせた。
「キスだけで感じるなんて、やらしい身体ですね」
「ッ!うるさい…」
強引に脚を開かせてその中心に顔を埋めた。
「っゃあぁ!…ッ」
思わず出てしまった声に自分で驚いたように、慌てて手で口を覆った。
わざと音を立てて口淫を施すと、声を出せない分快楽が体内を暴れているように、激しく身体を捩らせて切な気に圧し殺した吐息を洩らす。
「ふッ…んんぅ、はあッ…!」
兵藤の髪を掴む指は、止めてくれと抵抗しているのか、もっととねだっているのか。
もう両手で数えられない程抱いたけれど、田口から何かを求められたことはない。それが兵藤にはもどかしい。元々、身体を許されることが既に奇跡的なのだから、それ以上を望むのは欲張り過ぎだと自分に言い聞かせる。
だんだんと、抑えきれなくなった声が耳を刺激して、調子づいた兵藤は濡らした指で秘孔に触れた。少し高い声が上がって、兵藤の下半身に益々熱が集まる。指は抵抗なく飲み込まれ、熱い体内を蹂躙した。
「っ…ぁあッ兵藤、も、ダメっ…イきそ…!」
「先輩、エロ過ぎ…いいですよ、口に出して下さい」
「ば…」
何か言おうとしたのを邪魔するように、前立腺を指の腹で擦りながら鬼頭に軽く歯を当てた。身体が大きく痙攣する。
「ひぁ!っやあぁッひょうど…!」
イく瞬間に名前を呼ばれたねは初めてだった。掠れた高い声が自分を呼んだ時。田口の精液を躊躇うこと無く飲み下しながら、兵藤自身も耐えきれず射精していた。

ベッドの軋む音を田口が気にするのではないかと心配したが、杞憂だった。揺さぶられるままに快楽に溺れる田口の耳には、ベッドの音など入っていないようだ。
「…ぅあっ、はぁっ、…今日、なんか…っ」
「なんですか?」
「…ッ…しつこい…」
「二回目は長持ちするタイプなんで」
「二回目?」
「あ、いえ。気にしないで下さい。…先輩、もう疲れたんですか?」
そう訊いて、答えを聞くより先に胸の突起に口付けた。
「ひあっ…」
舌先を尖らせて突っついたり、唇で挟んでみたりと悪戯する。
「!…やぁっ…アアッ」
「まだまだいけそうですね。さすが先輩」
にっこり笑って言うと、田口は熱に浮かされたように濡れた目で睨み付けて来た。視線に心臓を射抜かれた様に、兵藤は一瞬硬直して…顔が紅潮するのを隠すように、田口の首筋に顔を埋めた。
「兵藤…?」
「…すみません、やっぱりあんまり長持ちしないかも…」
そもそも、こうして肌と肌を合わせ、髪の香りを嗅いでいるだけで何度だって射精してしまいそうな程の至福なのだ。かつては軽んじ、そして妬み、いつからか憧れ、求め続けてきた人だ。改めて意識してしまい、兵藤は少年のようにドキドキしてしまった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ