東城大学病院

□代償行為。
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夕方7時の愚痴外来。部屋の主はソファーに腰掛けた後輩の膝に跨がり、揺さぶられながら淫らな声を抑えていた。
「…田口先輩、色っぽいですね」
額に汗を浮かばせて兵藤は呟く。目の前に素肌の胸がある。白衣とシャツははだけて肩にずり落ちそうに掛かっているだけだ。滑らかな肌と小さく薄く色付いた乳首が酷く卑猥に映える。軽く口付けると、ビクッと大きく震え、兵藤の欲情を受け入れていた部分も締め付ける力を増した。
「先輩、そんなに締め付けたらすぐイッちゃいますよ」
「…っるさい、お前が、変なことするから…っ」
「変なことって、コレですか?」
再び乳首に口付ける。今度は軽いキスではなく、唇で啄み舌で転がし、執拗に刺激した。
「あぁっ!や、ダメっ!っんんんぅ…んあ!」
堪えきれず声を上げる。ダメと言いながら兵藤の頭を抱き込んで快楽に溺れていた。
前立腺と胸と同時に攻められて田口は声を抑えることさえ忘れて乱れた。意識が白く霞み、開いた口から漏れる言葉すら制御出来なくなる。
普段の穏やかでストイックな顔からは想像出来ない程に淫らな田口の姿に魅せられ、兵藤は夢中で白い肌を愛撫する。
その時。

「…っ…りゅうせんせ…」

微かに、けれどもはっきりと聞いてしまった声。兵藤は泣きそうな気持ちを抑えながら、田口を抱き締めた。

初めて抱いた時は、半ば強姦だった。
田口は抵抗の末に諦めの溜め息と共に「気の済むようにしろ」と言って躰を委ねた。彼の目の奥に映る男が自分ではないことを知りながら、兵藤は田口を犯した。

「…んぅうっ!も、ダメ!イくっ…!」
「…いいですよ、イって下さい。田口…先、生」
低い声で耳元に囁く。濡れた中心を摩ると細い躰がビクッと震えた。
「っア!ダメっ、…やああぁんぅッ」
そのあられもない声も、きつく自分の背にしがみつく細腕も、何もかも、自分の為の物ではない。最初から分かっていた筈なのに。
脱力した田口の躰を折れそうな程の力で抱き締めながら、兵藤は密かに泣いた。

end.

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