過去拍手文

□2011バレンタイン、榎京。
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「京極!チョコレエトだ!チョコレエトをくれ!」
「…榎さん、うちは洋菓子店でもなければ進駐軍でもないよ」
「そんなことは知っているぞ!こんな陰気な洋菓子店は世界中探したってある筈がないし、お前のような貧相な米兵は居ない」
「よく分かっているじゃないか」
「しかし、今日はバレンタインデエだ!愛する者にチョコレエトを渡す日なのだそうだ!」
「あんたは全く、そういう目新しい行事が好きだね」
「素敵じゃないか!恋人が甘いチョコレエトを贈り合うのだぞ!素晴らしい!僕からもお前に用意して来たのだ」
榎木津が突き出して来た洒落た包装の紙箱を受け取り、開けると、凝ったデザインのチョコレエトが甘い香りを漂わせた。
「綺麗だ」
「お前が平凡な感想を口にするのは、心が無防備な時だ。嬉しいぞ」
中禅寺は苦笑して、
「日本茶しかないが」
と席を立った。
暫くして戻って来ると、卓袱台の上に緑茶と羊羮を置いて、
「チョコレエトの用意は無いが…代わりにはなりませんか?」
と言った。
榎木津は面食らって、それから満面の笑みを浮かべ、勢いよく中禅寺を抱き締めた。

end.

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