復活書架

□神社、葉桜、早朝の君。
1ページ/2ページ

ヒバリを好きだと自覚してから一ヶ月強。

一見無表情な彼の細かな表情変化を、俺は汲み取れるようになった。

例えば今。早朝の神社で偶然会った彼は、一人で葉桜を愛でる時間を邪魔されて少し不機嫌だ。
まあ、邪魔したのは俺なんだけど。
「おはよヒバリ」
「…何で、君が」
「ランニングコース、幾つかあって、日替りなのな」
「早く通過しなよ」
「えー、ランニングよりヒバリとおしゃべりしたいなーなんて」
「咬み殺すよ」
「あはは、言われると思った」
しかし実際、ヒバリは動かない。いつもなら脅し文句と同時にトンファーが風を切るのに。
「あ、ヒバリまだサクラクラ病治ってないんだっけ?」
図星だったようだ。不機嫌さが増した。
「そっかぁ。今なら勝てるかな?」
冗談で言うと、野良猫みたいに全身から警戒オーラを出して身構えられた。
「わりい、冗談だよ、びびんなって」
「誰がびびってるって?」
「あ〜…何でもないです」
「大体キミ、体育会系のクセに、先輩にその口の聞き方はないんじゃない」
「すみませんヒバリ先輩」
少し低い位置から睨み付けて来る顔に、正直可愛いと思いながら、降参のポーズを示した。
その時、ふと思い付く。
「俺この前誕生日来たのな。だから今だけヒバリ…先輩と同い年かも。センパイ誕生日いつ?」
「…今日」
「…え?マジで?」
五月五日。端午の節句。こどもの日。そんな今日がヒバリの誕生日。
…なんか、可愛い。
「…何笑ってんの?」
「ゴメン、いや、覚えやすくていいなあって…そっかぁ、今日かあ。ヒバリ、何か欲しいもんある?」
「言ったらくれるのかい?」
「えーっと、俺に出来る範囲なら」
「たかが知れてるね」
「まあそうだけど」
「…静かに花見がしたいな」
葉桜を見上げてヒバリが呟いた。
そう言えば、今年はヒバリは花見が出来なかったんだ。だから今日、葉桜を残すこの神社に、誰も来ないような祝日の早朝に一人で花見をしに来たのか。
「…ヒバリ、ちょっと待ってて!10分だけ!」
俺は思い付いたことがあって、ヒバリにそう言い残すと返事も聞かず階段を駆け降りた。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ