復活書架

□あたたかい腕。
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※雲雀28歳、山本27歳。


「親父に、紹介したいんだ」
アメリカで野球をやっている恋人から、電話でそう言われた時、雲雀はギリシャに居た。匣兵器に関する調査で古代遺跡にまで関連性を見出だしたのだが、少なくとも今回の調査は空振りだった。

「…紹介?大将なら、何度も会ったこと…」
「恋人として」
「…正気?」
「正気だよ。俺が愛してるのはこの人ですって、そういう意味で紹介したいんだ」
「…止めた方がいいんじゃない?寿命縮まるよ」
「どうしてもって聞かねーんだよ。断ったら『お前は親に見せられないような恥ずかしい人間と付き合ってるのか』って言われて、『そんなわけねーだろ!』って、つい…」
雲雀は深い溜め息を吐いて、
「メジャーリーガーの君が付き合う相手として、同性のマフィア関係者っていうのは充分恥ずかしい相手だと思うけど」
「んなこと言うなよー。お願い!ヒバリ!お願いします!」
もう一つ溜め息を吐いて、雲雀は承諾した。


「親父、ただいま」
「大将、久しぶり」
「おかえり武。おお、誰かと思ったら雲雀さんか!久しぶりだねえ!」
「元気そうだね。良かったよ」
「バカ息子が店も継がねーで外国で球遊びしてやがるから、なかなか隠居も出来ねえんでな」
「あはは。わりいな親父」
「しょうがねえよ。まあ、弟子に恵まれたからな。寿司は握りてえヤツが握るのが一番だ。球追っかけてえヤツが嫌々握ってもしょうがねえ」
「話が分かる親父で助かるぜ」
「おい、そういやお前、今日は嫁さん連れて帰るんじゃなかったのか?逃げられたか?」
「親父、その件だけど」
「ごめんね大将」
「ん?なんだ雲雀さん」
「僕なんだ。嫁さんにはなってあげられないけど、武と付き合ってる」
剛のみならず、武も驚いて雲雀を見ていた。
「…そうか」
ぽかんとしたままそう答えた剛に、
「びっくりしたでしょ?」
と雲雀が言った。
「ああ。…ああ、びっくりしたな…でもまあ、良かった」
その言葉に、今度は雲雀が驚いた。
「良かった?」
「ああ。…いや、武があんまり渋るもんだからよ、相当紹介しづらい嫁連れて来るんだろうなって思ってよ。町内会のオヤジどもと話してて、そしたら『こんな嫁は嫌だ』大喜利みたいになってよ。もうアメリカ人のムキムキのオカマが来ようが宇宙人が来ようが驚かねえって覚悟してたんだよ。…雲雀さんなら、全く問題ねえ」
「大将…」
「親父…サンキュ」
そして、雲雀が少し笑った。
「…宇宙人って…」
可笑しそうに武を見ると、武と剛も笑った。
「おう、めでたい日だ。雲雀さんの好きなヒラメのエンガワ握ってやるか。他に何でも食べたいもん言いな」
「ありがとう大将。遠慮なくいただくよ」
剛に柔らかい微笑みを向ける雲雀を、武は眩しそうに見詰めた。
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