復活書架

□罪滅ぼし。
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夕陽が沈みきるまで眺めていた雲雀は、冷たいコンクリートにスーツが汚れるのも構わずに寝転んだ。

並盛中屋上。
――ここで、あの人と何度となく手合わせした。

雲雀にとっては「殺し合い」であっても、ディーノにとっては教え子に稽古を付けてやっているに過ぎなかった。雲雀は彼に本気を出させる事すら出来なかった。
悔しくて、何度も何度も、傷だらけの血塗れになっても立ち向かった。日が暮れるとディーノは雲雀の手からトンファーを取り上げて、「そろそろ腹減っただろ?帰ろうぜ」と、汚れても尚美しい顔で言うのだった。
四年も前のことなのに、ありありと思い出せる。

ディーノが来る時はいつも、応接室か屋上で寝ている雲雀の目を覚まさせるような慌ただしい足音を立てて、

タッタッタッタッ…

勢いよくドアを開けて、

バン!

バカみたいに嬉しそうな声で、「恭弥!」と…

「ヒバリ!!」

虚空に泳いでいた意識を叩き落とされたように雲雀は身を起こして、声の主を見た。
「山本、武」
「ヒバリ、やっと見つけた…」
「いいところに来たね。少し、殺し合いに付き合ってくれない?」
山本の返事を待たず、雲雀の身体がしなやかに飛び掛かった。




「君、つまらない」
「って、こんだけ好き放題やっといて酷くね?」
「だって、避けてばかりで攻撃してこない」
「ヒバリに怪我させたくねーもん」
「………あのひとは、攻撃してくれたよ」
「…知ってる。俺には出来ねーなって思いながら見てたから」
「自分で付けた傷を、辛そうに手当てするんだよ。可笑しかったな」
血と土埃でボロボロの姿でコンクリートに転がる山本の傍らに立つ雲雀は、傷一つ付いていないのに今にも崩れ落ちそうな程に痛々しかった。
「ヒバリ、そんなに好きなのに、何でフッたんだ?」
「……きいたの?」
「ああ。俺も、結婚式に招待されてるらしくて。…なあ、何で?」
「とても好きだからだよ。分からない?」
「ディーノさんがキャバッローネのボスで、キャバッローネは世襲制で、ヒバリは子どもを産めないから?」
山本の答えに、雲雀は乾いた声で笑った。
「殆ど百点だよ。そこまで分かっていて訊くなんて、君、性格悪いね」
山本は身体を起こして、立っている雲雀を見上げた。
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