復活書架

□初恋と、さいかい。
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※山本高3、雲雀起業一年目



「え?山本、カナちゃんと別れたのか!?」
「マジでか!勿体無い!」
電車の中で大きな声を上げるクラスメートに苦笑して、山本は
「またフラれちった」
と爽やかに言った。
そこに失恋の痛みを見出すことは出来ない。
「…つってさ、また同じ理由?」
「うん」
「『山本くんは私のこと見てない』って?」
「そうそう」
「そうそう、じゃねーよ。ヘラヘラしやがって。何人目だよ」
「覚えてねーなあ」
「ムカつくー」
「女の敵だ」
「それ以上に男の敵だ」
睨む友人達に、山本は
「そっかあ、俺の周り敵だらけかー」
と能天気に笑う。
友人二人はため息を吐いた。
「お前、失恋とかしたことないだろ」
「え、いつもフラれてるじゃん」
「それ、そもそもお前は恋してないんだから、失恋じゃないだろ。そーじゃなくて、マジで誰か好きになって、フラれたことがさ、ないだろ、お前には」
「あー…あるよ。中学んときだけど」
「マジで!?」
「しかもフラれては無いけど。好きだって自覚した時にはもう人のモンになってた」
「へえ、山本がねー」
「中学時代はもうちょい可愛げあったってことか」
「で?で?どんな子?」
「んー…いっこ上の先輩でさ、すげえプライド高くて、我が儘で、女王様みたいな人」
「なんだそれ」
「すげえな」
「でも意外と小動物とか子どもには優しくてさ、可愛いとこあんのな」
「お前まだ引き摺ってんだろ、明らかに」
「ははは、かもなー」
「あーあ、何も知らずにお前と付き合ってた女の子達、可哀想」
「てかさ、まだ好きなら略奪すればいいじゃん。お前ならイケるって」
「はは…それがさ、彼氏がまたすげー人なわけよ」
「なんだそれ」
「歳上で、背が高くて、金髪のイタリア人」
「なんだそれ!?」
「しかも当時22歳にして大企業の社長で、喧嘩もめちゃめちゃ強くて、顔もめっちゃ美形」
「それは、現実に存在する人間の話なのか…?」
「男の敵だ!」
「で、性格もいいんだな、これが」
「嘘だ!そんなヤツいるはず無い!」
「てか、22で中学生に手出したのか?」
「そう、そこ。ずりーよなあ」
「犯罪者だ!」
「でもさ、相思相愛っつーのかな。見てたら何も言えなかったな」
「山本…」
「お前も、辛かったんだな…」
「あはは、何だよお前ら、おもしれーな」
車内アナウンスが並盛駅への到着を告げて、山本は友人達と別れて電車の扉へ向かおうとした。
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