魔人探偵

□髭。
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「先輩、髭剃ってみません?」
石垣が覗き込みながら言うと、笹塚は近付いた顔を押し返して、
「剃らない」
と無表情に言った。
「何でですか?無い方が上のウケも良さそうなのに…もしかして、何か深い理由があるんですか?」
「無いけど、せっかく十年でここまで伸びたし」
「…え」
そういえば。
石垣には思い当たる節があった。
笹塚がサイとの戦いで重傷を負って入院した時のこと。
数週間の入院の間、髭を剃った様子が無かったのに、笹塚の髭は変化しなかった。
(そういえば先輩の体毛を見た覚えがない)
裸体を見たことがまず無いのだから、体毛を見たことが無いのは当然なのだが。
(先輩、男性ホルモン少なそうだし…脛毛とか無いのかなあ…………ってことは…まさか……あっちも!!?)
「先輩!温泉行きましょう!!」
「…清々しい程、思考過程が駄々漏れだぞ」
通り掛かった匪口が、その会話を耳に挟んで立ち止まった。
「…石垣さん、イイコト教えてあげようか?」
「何だよ」
匪口が石垣に近付いて耳打ちした。
『色素薄いけど、ちゃんとある』
一気に赤くなった石垣が、笹塚を見て更に赤くなった。
笹塚は怪訝そうに石垣を見返す。
ケラケラ笑いながら匪口が去って五秒後。
「は。何で知ってるんだ匪口ー!!」
石垣の絶叫が響いた。

end.

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