魔人探偵

□旧拍手@
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足音が近付いて来たかと思うと、勢い良くドアを開ける音がした。吾代のマンションのリビングでタバコをふかしていた笹塚は、玄関に目をやって硬直する。そこには、身長190センチの女子高生が立っていた。
「何も言うな」
「………………」
「………………」
「………………」
「…何か言えよ!」
吾代が好き好んでそんな姿でいる訳ではないことは、笹塚にも分かった。ネウロの虐めの一環だろうとも見当は着いた。
「…意外と、似合うよ」
「うるせー!!」
巨大女子高生は勢い良く制服を脱ぎ捨てた。後に残ったのはボクサーパンツ一枚の、普通の吾代だ。
「災難だったな」
「全くだよ。駐車場から此処まで制服で来るかパンイチで来るかマジ悩んだ」
「究極の選択だな。どっちにしても通報物だけど」
「他人事だと思って…」
吾代はそこで、何か良からぬことを思い付いたように口の端を吊り上げた。
「コレ、テメーが着てみろよ」
「…嫌だよ、何で」
「見てーんだよ。俺よかテメーの方が似合うだろ」
「まさか。三十路髭男に何言ってんの」
「髭さえ剃れば完璧だって」
キリの無い押し問答の末に、面倒くさくなった笹塚は
「分かったよ。じゃあもしアンタがメイド服でおもてなししてくれたら、ソレ着てやるよ」
これで退くだろうと読んでいた笹塚は、吾代の執着を甘く見ていた。
「よし!絶対だな」
「え…?」
「ちょっとドンキ行って来る!」
吾代は希望に目を輝かせながら、手早く服を身に付けて颯爽と家を飛び出した。


一時間後。

もぬけの殻と化した部屋で、制服とメイド服を手に一人佇む吾代の姿があった…。

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