御宝本閲覧室
□ラズベリータイム
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『ラズベリータイム』
「っ刈谷!?お前こんな所で何してんだよ!?」
「あーっはっはっは!安部きゅん遅いから待ちくたびれちゃったよぅ」
出張先のホテルのロビー。今日の予定を全て済ませ帰ってきたら…刈谷がいた。
「なんで。ってか、仕事終わってから来たのか?まぁ、そんなに遠くはないけどさぁ」
「だってさぁ〜、安部きゅん一人で良いとこ行って美味しいもの食べてズルくなぁい?なくなくな〜い!?」
「仕事だっつの」
「でも明日の午後はフリーなんでしょお。一人寂しい安部君のためにぼきがわざわざ来てあげたんだからさぁ。感謝してよね」
「いや、頼んでねーし。しかもそれなら、明日の午後来れば良かっただろーが」
「やだやだぁーい。ボクも安部きゅんとお泊りする〜」
「子供かっ」
「まぁ立ち話もなんだしぃ、とにかく部屋行かない?」
言われてみれば、まだロビーにいた訳で。
「なに、お前もこのホテルなのか?」
「え?安部君の部屋、ダブルにしてもらったから」
「はぁっ!?なに勝手に…しかもダブルって」
「うっそ〜!」
ニヤリと笑う刈谷に、だよな、と胸を撫で下ろした瞬間
「デラックスツインに変えてもらっておいたから。この勝ち組の僕が!デラックスなんて泊まったことないであろう安部君のためにね!」
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渋々部屋に行ってみると、そこは普段泊まるような狭い部屋ではなく、広々とした空間が広がっていた。
時間的に夜景が綺麗な、上層階からだからこそ見渡せる広がった景色。
肌触りの良さそうなソファーに品の良いローテーブルと照明。ベッドも充分な広さがあり、ふかふかそうだ。
女性が喜びそうな部屋だった。
なんでこんな豪華な部屋に刈谷と泊まらなきゃいけないんだとひとりごちる。
もちろん、刈谷がいるからこその恩恵なのだが、何だか腑に落ちない。
本当に刈谷はよく分からないことをする奴だ…。
「安部く〜ん。珍しい部屋の観賞にふけるのもいいけどさぁ、飲もうよ」
いつの間にか机の上には、刈谷が調達してきたらしいビールやらワインやらつまみなどが並んでいた。
「あぁ、そーだな」
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