story
□Target
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HRが終わって部活に行くものは部活に、ないものは帰宅。
今日は仕事もないし本当なら俺もこのまま直帰できるはずだった。
明日は休みだし、今日はのんびり風呂入って酒飲みながらテレビでも見てぐっすり寝よう。
そんな至福の一時を考えていたのに…
「これも正解」
「どーも」
「お前さぁ頭良いんだからさぼんなよ」
「だってめんどくさいんだもん。いーじゃん補習もラクで」
「あのねぇ」
そういう問題じゃないっつの
俺はクラスの一員である高杉晋助に捕まっていた。
理由は簡単。サボリ授業の補習。俺が受け持つ教科ばかり休むから困ったものだ。
しかも頭良いし、補習なんていらなくね?って思う。
「じゃあ今日の補習終わり。気を付けて帰れよ」
「…先生ェ、送ってよ」
「はぃぃ?無理。自分で帰んなさい」
「だって雨降ってる」
いつの間にか外は土砂降り
「俺傘持ってねェんだ」
「…ったく、しょーがねぇな」
先に車の鍵を渡して、俺は職員室で帰る準備をしてから向かった。
…生徒一人、家まで送るだけだ。滅多に無いことかもしれないけどそこまで驚くことじゃないだろう。それに相手は男。何も問題はない。
何故かぐるぐると言い訳のような、理屈じみたことを考えていた。
そうしているうちに車につき、運転席に乗り込む。
「遅くなって悪ぃな…っておーい、起きてる?」
助手席に座る高杉はぐっすりと寝ていた。
普通に起こしてもよかったがなんとなくからかいたくなって、デコピンで起こした。
「……………痛ェ」
反応鈍っ
「ほら道案内しな。送ってやっから」
「やだ」
「あぁ?」
職員室から持ってきたコーヒー缶を開け、飲み始める
「お前なぁ先生を困らせるもんじゃ」
「先生ェ、今日泊めてよ」
ぶっ
「は、はぁぁ?」
「どーせ明日休みだろ?先生奥さんとかいるの?」
「いや…いねぇけど…」
「じゃあいいじゃン」
普段無愛想なやつに笑いかけられると、それが男でも女でもドキッとしてしまう。生徒の隠れた一面を見れることで教師として幸せを感じる奴もいるんだろうな
「泊まる…たってお前親御さん心配すんだろ」
「朝から仕事で明日の夜まで帰ってこないから大丈夫」
大粒の雨が止まない空を見て畳み掛けるように高杉は言った
「俺、家のカギ持ってねぇんだ」
う、嘘くせぇ…
…でもまぁ、ホントに持ってなかったら可哀相だし?俺も一人だし…一泊くらい…まぁいっか?
そうして俺が下した決断は
「…わかったよ」
降参気味にいった俺に、高杉は本日二度目の微笑みを向けた
すみません続きます
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