story

□杉誕
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日付が変わったばかりの8月10日

空にはでっかい月が浮かんでいる

寝付けなくて、俺はただその月を見つめていた



欠伸も出てきたところで、そろそろ布団に入ろうとしたら一人の男が部屋に入ってきた

月の光に反射する銀髪が眩しい

「まだ起きてたんだ」

銀髪の男──銀時はそう言うと俺の隣に腰をおろす

「…何しにきたんだよ」

寝るところだったのに、俺は不機嫌そうに言った

「晋助に会いにきた」

にこっと笑う。
たまに、というかよくこいつはわけの判らないことを言う

そんなの、いつだっていいじゃねぇか

結構長い間一緒にいるが、未だにこいつのことはよくわからない。掴めないヤツ


「そうかよ…でも俺ァもう寝んだよとっとと出てってくれ」

「じゃあ俺も、一緒に寝る」

「はぁ?」

「たまにはさ、いいじゃん」


そのまま俺の肩に手をかけ、抵抗する間もなく俺は布団に押し倒された


「はなせよ、ぎん…っ」

言いかけたところであいつの口が重なり、その先の言葉を発することを許さなかった


「んっ…ん〜…」

髪を手に絡め後頭部を押さえられているため離れることが出来ず、息が出来なくて苦しい。必死に最後の抵抗
として銀時の胸を叩く

そして銀時はゆっくり、口を離した

「はぁ…てめっ…なにすんだよ」

息を荒げ睨みながら俺は言う
銀時は優しく笑う

「今日、何の日か判ってる?」

「え…?」

「誕生日おめでと、晋助」

そう言ってまた重なる唇
今度はさっきのような濃い口付けではなく軽いものだった

それは額と頬にもされ、首筋に移動する

「やめ…はぅ…」

くすぐったいのと恥ずかしさで、自分でも顔が赤くなっていくのが判る

「やっぱ可愛いな、お前」

楽しそうにくすっと笑う銀時に遊ばれるのが悔しくて、強がって言い返した


「てめぇ…からかってんのかよ」

すると銀時はいつになく真剣な顔で言った

「違う。本気だよ、俺は」

そして俺の口をペロッと舐めあげた


「晋助はさ、俺のこと、嫌い?」

弱々しい声で、微かに不安そうな顔をしていった。もしかしたら俺の口から出るかもしれない「キライ」の可能性に怯えているのだろう。

不要な心配だ

…ちょっと悔しいけど。


「…好きだよ。ばーか」


今度は自分から銀時の口にキスしてやった

次の瞬間、ぱぁぁっと顔を輝かせる銀時

「本当に?ホントにホントにホントに!!?」

「うっせーうっせー」

「ね、お願い!!も一回言って!!!」

「俺ァ一度しかいわねんだよばぁか」

「俺は何回でも言うよー?」


余裕の笑みを浮かべ、好き好き言いながら抱き付いてくる。う…うざい。こんなことなら言わなきゃ良かったかも

でも、そこには確かにある幸せを感じてしまったから質が悪い

離れないように銀時の腰に手を回し、一段と強く抱きしめた


「銀時、ありがと」



此の幸せが、永遠にありますように。






END
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