12/03の日記

23:50
かわいいものだいすき!
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誰にも言ったことはないけれど、勝呂は可愛いものが好きだ。
大きいものよりも小さいものが、竜や獅子よりもウサギや猫の方が可愛らしくていいと思う。けれど、そんなことはおくびも出さず、勝呂は小さいものを「壊しそうや」と言って断り、ウサギなどは「女々しい」と言って獅子を選ぶ。
だって、似合わないじゃないか。こんな強面の男がウサギを愛でるだなんて、視覚的犯罪もいいところだろう。
時折、勝呂は子猫丸が羨ましくて仕方ないのだけれど、そんな感情は微塵もみせずにいるものだから皆が皆、親ですら、勝呂が可愛いもの好きだなんて知る由もない。
――ただ一人を除いて

「坊見てやこのマスコット。可愛えやろ?さっき女の子がくれたんや!」
「坊、坊。ジュース買うたら付いてきてん。ウサギのストラップ!あげますわ!似合いますてきっと!」
「ぼーん!みてや新しいカバン!ピンク色!ぶっは、可愛らしやろ?ウケへん?」

志摩はいつだって勝呂に「可愛いもの」を見せてくる。勝呂が可愛いもの好きだと知っているのか、それとも純粋にウケ狙いなのかは未だはっきりしないのだが、それでも志摩は、志摩だけは皆が勝呂が嫌っている、と思っている可愛いものを持ってくるのだ。
たとえ、ただの偶然であろうとも、志摩は勝呂の求めるものを持ってくる。

「ぼぉん!子猫さん!見て、髪染めたん!」
「な、」
「志摩さん…その髪」
「ふは、光に当てるとちょっとピンク色なん!可愛えやろー!」
「もう…八百造さんに怒られますえ?」
「えー?坊かて髪染めたんやし大丈夫やろ。それに金兄ほど派手ちゃうし」
「どっちもどっちです…坊?」
「坊?どうしたん、黙って」

髪がピンク色の志摩はえらい可愛らしかった。
色が薄くなった分、いつもよりふわふわしているように感じる髪と、黒目がちの垂れ目と、ちょっと大きめのカーデから覗く指先と、カバンに付いたうさぎのストラップと、最後にもう一度ふわふわしたピンクの髪とを見つめて、勝呂は頭を抑えた。

「坊?どうしたん、頭痛いん?」
「坊、志摩さんがそんなに頭痛かったんですか?」
「え?原因俺?子猫さん酷い!」

子猫と志摩がなにやら言っているが、勝呂はそれどころではなかった。
なんでそんな可愛いもんが似合うんや!可愛えなぁちくしょう!!

勝呂は可愛いものが大好きだ。
今勝呂の一番のブームはピンクの似合う幼馴染である。




最初は女体化でやろうと思ってた。百合百合なすぐしま。
だけど、女子が可愛いもの好きって言うより男子が可愛いものが好きって言った方がインパクトある…!とハッとして普通のすぐしまになりました。
これをすぐしまと言い張る私の豪胆さ。

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22:54
頭痛い
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廉造の様子がおかしい。
どうも頭が痛いようで、よく部屋の隅で頭を抑えて蹲っている。表情は強張り、いつも額をこすっている。
それでも家族に心配をかけまいと笑おうとする弟が余計痛ましくて、何度も医者に行けと言うのだが、やんわりと笑って否定されるばかりだ。

「痛い…痛い…痛い…」

廉造の頭痛が酷いものだと気付けたのは、この小さな悲鳴があったからだ。柔造の部屋と廉造の部屋とはふすまを一枚隔てただけなので、防音効果などほぼゼロに等しい。いびきや寝言だってばっちり聞こえる。
ある日、柔造が布団に入って暫くした頃に廉造の呻き声が聞こえたのだ。
「廉造?どうした?腹でも痛いんか?」
特に気にすることもなく、ふすまを開ける。すわ腹でも下したか、と。
しかし、そこに居たのは頭を押さえ、虚ろな目で「痛い…」と繰り返す弟の姿だった。その尋常ならざる様子に驚く。
「廉造?廉造!?どうした、大丈夫か!?おい!」
「痛い、痛い、痛い痛い痛い痛い痛い…」

よほど辛いのだろう、ほろほろと涙を零しながらうわ言のように只管痛みを訴えてくる。意識もあるかどうか判然とせず、誰かを呼ぼうかと立ち上がりかける。だが、廉造の手が縋るように柔造の袖を握り締めていることに気付き、どうすることもできずに弟を抱きしめた。出来ることと言えば、抱きしめて頭を撫でることくらいだった。

最近悪魔の動きが活発化している。どうもそれはこの京都だけの現象であるらしく、色んな地区の人間が調査兼応援に来てくれたので、忙しいなりにも何日かは休日も取れた。
とにかく、今は廉造をひとりにしたくなかったのだ。悪魔の動きが活発になるにつれ、廉造の頭痛も酷くなるようで、昨晩は頭から血が出るほどに壁に頭を打ち付けていた。
「痛い、痛い痛い痛い!!あ、あ、ああああああ!!!!痛いいいい!!」
泣き喚きながら真っ赤になった頭を壁に叩きつけ、その壁も廉造の血で真っ赤に染まっていた。仕事から帰ってきて見た光景に、俺は足が竦んだ。
その日、家族は誰もいなかった。誰かがいたなら廉造の悲鳴にだって気付けたはずだ。けれど、その日は皆が悪魔討伐や手伝いにでかけていて、家は廉造ただ一人だったのだ。
とにかく必死に身体を動かして、廉造を押さえ鎮痛剤を飲ませ、無理矢理寝かしつける。
家族に説明して、なるべく夜は仕事を入れないでほしいこと。もしそれが駄目なら誰か廉造についていてやってほしいと。
家族は廉造の頭を痛ましげに撫で、気付かなくてすまないと皆が謝罪した。
廉造は


「…ええよ。俺、正直なんも覚えてへんの。ごめんなぁ迷惑かけて」




「あ、あ、あぁ、がアあアあああぁァああァァぁアぁあぁ!!!!」
「廉造!廉造!!」

廉造の様子はますます酷いものになった。夜が一番痛みが酷いらしく、夜な夜な叫んでは頭を打ち付けるのだから、家族は夜を徹して廉造に付いていなければならない。
俺らは交代で眠れるからまだいい、と柔造は痛ましげに廉造の目の下の隈に触れた。さもあらん、廉造は痛みで眠ることも出来ないのだ。痛みに魘され、夜に暴れ、痛みに怯えて、朝に気絶するかのように僅かな眠りに落ちる末弟が哀れで仕方なく、柔造は廉造を抱きしめた。そうすることしかできぬ自分が憎かった。
と。ぷしゃ、と廉造の頭から血が吹き出る。
また打ち付けたのかと慌てて額を撫でれば、なにか、尖りのようなものが

「え」

それは、廉造の額を突き破って生えてきた、小さな角だった。

悪魔落ち、その言葉が頭の中でリフレインする。
どうすればいい、相談する?誰に?お父?いけない、出張所には余所の祓魔師も大勢いる。ならば誰に?どうしたらいい、俺はこの弟をどうすればいい?

「あ、あ、あ…」

未だ血を噴出しながら、痛みのせいか角のせいかガクガクと震えながらも、どこか恍惚とした表情をする廉造に、俺の中の何かが、ごとりと音を立てた。





こっから怒涛のヤンデレを発揮した柔兄が廉造監禁ルートを突き進むはずが力尽きた。

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