06/30の日記

23:45
新羅さんと臨也さん
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平和島静雄の力は異常だ。鉄パイプを飴細工のようにたやすく捻じ曲げる怪力を有しているわけだから、腕をつかまれたらばそこは黒々としたアザが残るし、肩をつかまれれば下手すれば脱臼する場合もある。それ故に、折原臨也が相手を打ち負かすための攻撃技でなく、まずパルクールを使った逃走術に重点を置いたのも無理からぬことである。平和島静雄に力で持って対抗しようなど愚の骨頂、誰も戦車に素手で挑む馬鹿はいない。
しかし、折原臨也は出会った当初から、ずっとその戦車に挑み続けている。肩を外され腹を殴られ血反吐を吐いて、満身創痍となりながらも。
それが二人の共通の友でもある岸原新羅は不思議でならなかった。

「ねぇ臨也、どうして静雄に固執するんだい?そんなに気に食わないならお互い無視でも何でもしたらいいだろうに」

静雄はともかく臨也は愚かではない。自制心だって人並み以上にあるはずなのに、どうして毎度あんな大怪我をしてまで喧嘩をするのか。
臨也はきょとんと目を瞬かせて不思議そうに新羅を覗き込んだ。

「自明の理だと思っていたけど」
「君らの考えがかい?馬鹿な。静雄はともかく、君の頭の中は盤根錯節で想像もつかないよ。もう少しわかりやすい構造であれば良かったのに」

呆れて肩を竦めたら、臨也は面白そうに口角の上がった唇をゆっくり開いた。
無駄に顔の整っている男だからか、その動作はとても美しい。

「……そうだねぇ、俺も何度も思ったし、関わるのを止めようとしたこともある。はは、なんだいその顔。本当さ!別に俺は殴られて快感を見出す性質でもないし…でも駄目なんだ、我慢できない。もうこれは本能だよね。…たとえ話をしようか、新羅の自宅にゴキブリが出たとしよう。嫌だろ?バルサンかホイホイか、スリッパでも新聞紙でもいいさ。どうにかして殺そうと、排除しようとするだろ?あんなに気色悪い虫放っておけ、放っといても死にはしないさ。そう周囲が言ったとして、それでも君は排除しようとするだろうね。それが自力でか他者に頼んでかはどうでもいいよ。つまりね、生理的嫌悪感にはどうしたって堪えられないんだよ。シズちゃんは俺のことをノミ蟲っていうけどさ、それはまさしく彼にとって俺がノミ蟲だからだろうね。不快感、嫌悪感、おぞましいまでのそれはいっそ憎悪にも近い。同じ空間に居るのが嫌だ。同じ酸素を吸っているのも許しがたい。目の前を横切ることすら吐き気がする。見えなくともアレが生きて存在していることに虫唾が走る。できればちゃんと死んで欲しい。できれば目の前でそれを確認して、この漠然とした嫌悪を取り除きたい。お互いにそう思っているんだから、新羅、無理なんだよ。無駄なんだ。どっちかが死ぬしか解決法はないよ――だから諦めて、さっさと折れた肋骨の治療をお願いしたいんだけど?」

よくもまぁ肋骨の折れた状態でこんなに朗々と話せたものだ。呆れながらも包帯を巻く手は止まらない。
それにしても、本当に回りくどい男だ。ただ「生理的に受け付けないから無理だ」といえば事足りるだろうに。まぁ静雄の回答がこれだったわけだけれど。

「何?ため息?幸せが逃げるよ」

いけしゃあしゃあと。軽く睨みながら鎮痛剤を打つ。
似たもの同士の二人は決して相容れぬだろう。彼らが彼らとして存在する限り平和は訪れまい。

(記憶をなくす薬でも投与してみるか…?)

整形するだけじゃあ駄目だ。顔や声、見た目の一切を変えたとしてもあの二人はお互いに気づくに違いない。ひょっとしたら記憶をなくしても嫌悪感は忘れない気がする。
嗚呼まったく!そのベクトルの方向さえ見なければ比翼連理の仲とも言えるだろうに!どうして僕とセルティのように仲むつまじく心穏やかに暮らせないのだろうか。とはいえ僕もセルティの傍では心穏やかなんて到底無理だけどね!
新羅の憂いは、しかしすぐさま首のない同居人に支配された為、記憶喪失の薬は未だ彼らに投与されないでいるのだった。





一発書き。
意外と新羅が好きな自分がいる。

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22:55
クルリマイルができるまで
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私たちは人間になりたかった。
イザ兄が香水の臭いを漂わせていた時、イザ兄が吸いもしない煙草の臭いを纏わせていた時、イザ兄が季節はずれの虫刺されをいっぱいつけてきた時、私たちはその度に尋ねた。

「「どうしてそんなことするの?」」

答えはいつも同じ。

「決まってるだろう。人間を愛しているからさ!」

ならば私たちはと問えば不快そうに眉をひそめて、妹に手を出す程悪趣味じゃないと言い捨てられた。
なるほど、イザ兄にとって私たちは人間でなく妹という生き物であるらしい。だから、愛情の対象になり得ない。
それじゃあ駄目だ。
それじゃあ嫌だ。

「「人間になれば」」

私たちは人間になりたかった。そうすればイザ兄は愛してくれる。
もう、妹だけじゃ足りないの。




ブラコン属性は私の得意とするところです。
ヤンデレも私の得意とするところです。
中二は私の持病です。
ならば折原家を書かないわけにはいかなかった。
それにしても巷のイザビッチは大変卑猥でけしからんですなもっとやれ。

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