シリウス連載短編集
□T 偽物の自分
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偽者。
偽りの家族。
偽りの自分。
俺が何より大嫌いなもの。
その象徴が、この作られた笑顔。
それは、自分自身が嫌というほどわかっている。
それでも、そうしていなければ、この家に自分の居場所など無い。
そして、自分が作り笑いをしていることに気付いていながらも、軽蔑するような視線を向けてくる、家族と呼ばれる人たち。
昔は違ったはずなのに。
そう、ホグワーツに通ってから、それは現れ始めた。
彼らは変わってしまった。
いや、元々そうだったことにようやく気付いたのかもしれない。
家族という言葉に隠されていただけで。
なにより、グリフィンドールという寮に組み分けされてからだ。
跡取り息子のはずが、いまでは厄介者に等しく思われている。
それでも、自分はこの偽者の笑顔と共に、この家で暮らすのだろう。
ただ漠然と思っていた。
自分には、何の力も無いのだとも。