拍手ありがとうございます!!
庭の木の上に静かに降る雪は、徐々にかさを増していき、足首ぐらいまでの高さとなっていた。
柊の葉は濃い緑色で、恐ろしい程底の無い闇に溶け込んでいた。
でも今日は空から舞い降りた雪で飾られ、素朴に飾られていた。
そんなすぐ側を駆けているのは犬ではなく、可愛い嫁と門弟達である。
「今日は冷え込みましたな。」
台所からお茶を2つ持ってきて。
「気が利くねぇ、伍助ちゃん。」
用意したお茶の片方を、こたつに潜り込んだ摂津殿に渡す。
自分も再びこたつに潜り込んで、卓上に置かれたみかんを一つ取った。
「伍助ちゃん、伍助ちゃん!」
みかんの皮剥くのを止め、顔を上げると、
鯉のように口を開けて、何かを待っている摂津殿。
その姿が可笑しくて、吹き出してしまった。
「何だよぉ、伍助ちゃぁん。」
怒ったように顔を膨らませ、唇を突き出して拗ねているが、
その姿さえも、今は笑いを誘う火種でしかない。
「あっはははは…っは……ぁ、く、苦しいぃ」
「笑い過ぎだよ。」
指摘をする摂津殿も笑っている。
何か幸せだな…
「で、食べさせてくんないの?」
手を布団の中へと突っ込み、顎を机の上に乗せた状態で見上げられる。
「子どもみたいですな。」
「良いじゃん。」
「みかんはまだまだありますぞ。」
机の上に置かれているみかんの入った籠を、反対側に座った摂津殿の所まで滑らせた。
「そういう意味じゃなくて、」
にこにこと、こたつの中で足を絡めてきた。
「伍助ちゃんが剥いたみかんが、食べたいの。」
絡められた足に、力が込められる。
板間を歩いてきた足は、徐々に温もってはきていても、
やっぱり、ずっとこたつに潜っていた足よりは冷たくて、
絡められた足が痺れるような感覚。
「伍助ちゃんのみかんの方が、どれよりも甘そうだし。」
たまには良いかもしれない。
こんな甘い雰囲気も。
冷たいみかん皮に爪を立て、
食べやすい大きさの選び、
我が儘を聞いて貰えた子どものような表情を浮かべる、緩みきった口元へ運んだ。
ehd.
0038