黒碧ノ騎士

□解けた想い
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「ん・・・、」
「お目覚めですか、閣下」

ふ、と目を覚ますと、
全く見覚えの無い、
ぼくと同世代くらいの男に
見下ろされていた。

「此処は・・?」
「眞魔国、カーベルニコフ領です。
済みません、何分、
移動になれておりませんので」

少し表情を歪めて、彼は言う。
まずはその彼が何者か、
敵ではないのかを知りたい。

「・・・お前は・・?」
「オレですか?
オレは、・・・・、」

逡巡して、それから
口を開く。

「ユーリ、と、申します」
「ユー・・リ・・、か」
「はい。」

まあ、まず、ぼくを『閣下』呼びして、
こうして話しているのだから、
敵ではないだろうか、と
思考が落ち着いた。

「お怪我はありませんか?
急いでおりましたので、
あまり防御に力が
回らなかったのですが・・・」

言われて、自分の体を見てみるが、
特にこれといった負傷もない。

「―――・・・?」

と、自分の意識のなくなる
直前を思い出した。

確か、眞魔国同盟の人間諸国の代表者たちと
会議を開いて、
その全日程の終わった夜、
大シマロンに襲撃を受けて・・・、
・・・・・?

「閣下?」
「ぁ・・・、いや、」

そうだ、ぼくは殺されかけたのでは?
兄上や協力国の者達を逃がすためにと、
たった一人で、
無謀にも数百の兵とやりあったのだ。

そして、確か、
右腕と腹部、背中と両足に
かなり酷い傷があったはずだ。
出血もあった。



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