本編
□第十一話 団服
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イツキは父親に絶対服従だった。
一見、学校では自分の意思を持ち、尚且つリーダーシップの取れる人間だったが、それら全ては父親に教え込まれた帝王学なるものによるものだった。
ユイがそれに気付いたのは出会ってまもなくだった。
その頃、イツキの母親が男の子を妊娠していた。イツキの脳裏を常に不安が掠めていたのだ。
そしてそれは現実となった。
「跡目じゃなくなった」
そう言ったイツキの顔は能面のようだった。
いくら父親に絶対服従とはいえ、人間らしく喜怒哀楽の多彩だったイツキが、その頃だけはまるで出来の良いロボットだった。
以前と何ら変わりなく過ごすのに、そこに感情はまるでなかったのだ。
ユイはその時ほどイツキを恐ろしいと思ったことはなかった。
「長女ってのも、辛いのね」
ユイ自身は姉と兄を持つ。
両親の束縛からは程遠い身だった。
「さーて、コムイとブックマンの会話でも記録しとくか」
ユイは腰のホルダーからPCを取り出してイノセンスを発動させると、リナリーの病室に残してきたゴーレムとの無線を繋いだ。
するとすぐに二人の声が入ってきた。
言葉端から察するに、ノアの一族について話しているようだった。
ユイはそれに耳を傾けた。