本編
□第八話 性質[下]
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「試験台になってもらっただけのことよ。科学班の奴等も同罪よ」
"同罪"。
見てはいけないのだと、心の奥底で思っていたからこそ、思わず出た言葉。
無自覚なユイに反して、ラビはそれに気付いた。
しかしながら、科学班の奴等も同罪ということは、記録した映像をモニターにでも映し出したのだろう。
「…格好ワリィ…」
溜め息を吐いて呟いた言葉は、しっかりユイの耳に届いていた。
格好付けたい年頃 ―― なのだ、普通は。
だけど、ラビは妙に大人で。
"ぶっている"、のではなく、"大人"で。
その中にある物を、ユイは知りたくなったのかもしれない。
だから、この部屋に来たのかもしれない。
「ふふっ」
思わず笑ってしまったユイ。
ラビはそれをギロリと睨んだ。
「何がおかしいんさ」
「だって、アンタ格好悪いんだもの。」
ケロリと失礼なことを言ってのけるユイに、ラビはぶすっとした。
「アンタ、全てが計算なのに、さっきだけは違った。何を思ったか、なんて知らないけど、計算なんてしてなかったわ。アンタみたいのでもそんなにイチイチ格好の善し悪しを言うのが、面白いわね」
人と成りを評価されているようにも聞こえなくはない。
ラビは喜んでいいのか、落ち込むべきか、逡巡したが、考えるのを止めた。バカバカし過ぎる。
「ユイって、ズバリ言うね」
ラビは開き直って言った。
落ち込んでも致し方ないのだ。
死んだ人間は帰ってこないのだし、帰ってきたとしても良いことなんか一つもない。
「"素直"って言ってちょうだい」
ラビが少し気分の良くなったことを感じて、ユイは楽しそうに言った。
そこでノックの音がして、コムイとブックマンが入ってきた。
「あれ?ユイちゃん、どうしたの?」
来客のユイを認めてコムイは目をしばたかせ、ブックマンは目を細めた。
「ブックマンを探してたの。良かったわ、会えて」
知識が豊富だと伺ったから、お聞きしたいことがあるの。
ユイは理由をそう言って、この部屋に来たことを繕った。
コムイもブックマンもそれに不信感は抱かなかったようだ。