本編
□第八話 性質[下]
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「じゃあ、ユイちゃんにも行ってもらおうかな」
おそらくリーバーから聞いていたのだろうコムイは、ユイがやっと任務に行ってくれそうな気配に口角を上げた。
「ラビ、昨日はお疲れ様。おかげで犠牲者が少なくてすんだよ」
「ああ…」
ラビは表情を陰らせて、頷いた。
コムイはラビの手に握られている白いリボンに気がついた。
「それは?」
コムイが問い掛けて、ユイは初めてその存在に気付いた。
「ダグの…持ち物さ」
ラビは僅かに微笑んだ。
それは見ている三人の胸を痛めた。
―― ダグ…あのアクマね…
ユイは頭の中で情報を結びつけていく。
持つべき人の墓へ渡しに行く。
そう言うラビ。
そうか、とだけ言ってコムイは視線を落とした。
「ダグは優秀な探索部隊だった。今回のことは残念だよ、ほんとに」
「仕方ないさ。これは戦争なんだから」
すっきりした物言いに、コムイもブックマンも一瞬意外そうに目を見開いた。
ユイはどこかに安堵を覚えた。
「疲れているところ悪いが、次の仕事に一緒に行ってもらいたい」
「今度はどこさ?」
コムイはドイツ、と答えた。
ユイちゃんもね、とウィンク付きで言われて、ユイはウィンクを軽く流して頷いた。
ラビも了解した。
「ユイ嬢、よろしく頼みますぞ」
ブックマンは唯に歩み寄った手を差し出した。
ユイもそれに応えてブックマンの手を握った。