本編
□第五話 開幕
3ページ/7ページ
教団内には未だ補修工事の音が鳴り響く。
三人はすっかり忘れていたが、コムリンの暴走はかなりのものであったらしい。
「被害のない部屋があるので、一部屋ずつ使って下さい。」
三人は同じ階層の近くに部屋をあてがわれた。
「リナリー、敬語じゃなくていいよ?喋りにくいだろ?」
イツキはそう言うとリナリーも素直にそうした。
「名前も呼び捨てで構いませんわよ」
ツバキはにっこりと笑ってリナリーに言った。
「じゃあそうするね」
リナリーは嬉しそうに三人に笑顔を向けた。
「ここって、男の人ばかりだからイツキたちみたいなお姉さんが来てくれて、すっごく嬉しいの」
そこでツバキの部屋に到着した。
部屋は机椅子とベッドがあるだけで、がらんとしていた。
「バスルームはこっちね。必要な物は言ってね。貸せる物は貸すし、そうじゃなかったら買いに行きましょ」
「ありがとうございます。」
それじゃあ、と言ってイツキとユイを連れて部屋を出て行った。
イツキの部屋はツバキの部屋の二つ隣だった。
「リナリーの部屋ってどこなんだ?」
イツキが尋ねるとリナリーは階上を指差した。
「ちょうどこの上よ」
「ゆっくり休んでね。」
気遣いに感謝しながら、与えられた部屋にイツキは入っていった。
「最後はユイさんですね」
自分だけさん付けされてユイは鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。
「私も呼び捨てでいいわよ?敬語もいらないし」
そもそもどうして私だけ?、とストレートにユイが聞いたら、リナリーは顔を俯かせた。
「ユイはずっと喋らなかったから敬語の方がいいのかな…って思ったの」
三人ともキレイだから緊張しちゃって、と頬を染める姿は可愛らしくて、ユイは少しだけコムイのシスコンっぷりを理解した。
「ユイの部屋よ。ここはこっちがバスルームね」
それじゃ、とリナリーは去って行った。