本編

□第四話 受諾
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「「イツキ…?」」



二人の視線がイツキには痛い。
階上でドタバタと聞こえる。
おそらくコムリンが暴れているのであろう。



「…」



イツキは二人と視線を合わさぬように、明後日の方向へ目を背けた。
二人の目にはますます侮蔑が込められていく。



「よもや…」



「"迷った"なんていわないよね?」



グサリと刺す言葉に言い返すこともできず、イツキはうなだれた。



「…ごめんなさい」



謝れば、二人は噛み付かんばかりの勢いでイツキを責め立てた。



「ちょっと、黒澤のお嬢が"ごめんなさい"で済むと思ってるの?!」



「うぅ…」



「こんな初めての場所で迷うなんて、有り得ませんわ…」



「いや、初めてだから迷うんだろ?」



ツバキの言葉に思わず突っ込めば、倍になって返ってきた。



「「御託はよろしい(ですわ)!」」



「ハヒ…」



今の二人には何も言うまいとイツキは胸に誓った。



「どうするぅ?」



「そうですわねぇ…」



『そこに…い、いるのは…誰、ダ…?』



二人が思案していると、どこからともなく声が響いた。



「「「!?」」」



驚いて振り向けば、光りを纏った蛸足のような物がこちらに伸びてきていた。



『い、イノセンス、を…かん、じる…』



蛸足は三人の前で一旦止まり、宙を彷徨った。



「何コレ…」



ユイは気味悪そうに表情を険しくした。



―― ヘブラスカ



『あ、新たな…適合者…エクソ、シスト…』



本当にD-Graymanの世界なんだと、イツキは思い知らされた。
足はツバキの方に伸び、ツバキの体に巻き付いた。



「きゃっ」



「「ツバキ!!」」



危険はないと分かっていてもイツキはツバキに手を伸ばした。
ユイも懸命に手を伸ばし、ツバキの手を掴んだ。
それぞれの手がヘブラスカの足に触れ、光りを放った。


 
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