本編

□第二話 招喚
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「神田!」



眉間に皺を寄せた彼は、神田 ―― 神田ユウ。



「テメェは、ソレ持ってとっとと本部戻れっつったろうが!」



「すみません、アクマの反応があったので、つい…」



「なんなの、あのパッツン。頭ごなしに怒鳴っちゃって。」



ユイがポツリと呟いて、イツキが吹き出した。



「あ"?」



「ぷっ」



アレンも、パッツン発言に吹き出してしまった。
神田はギロリとアレンを睨んだ。



「斬るぞ、モヤシ。大体なんだあの女たちは。」



「そんなの、僕が知るわけないじゃないですか。それにモヤシじゃありません、バカンダ。」



三人を無視して二人の不毛な言い争いは続く。



「六幻の錆にしてやる。」



「錆びた刀で斬れるわけないでしょうが、バカンダ。」



イツキは一辺に消え去った緊張感に溜め息をつきながら、ツバキの様子を伺った。



「まだ痛むか?」



ツバキは息が荒くなり、声も音にならなくなっていた。
これはマズイとイツキは言い争う二人に向き直った。
と、そこで黒いコートの下で強く光っている何かを見た。
アレンのコートの中だ。



「なあ、なんか光ってるぞ?」



「はい?」



口を一旦止め、イツキが指差した自らの腰元を見れば、コートの内側で何か光っていた。



「これは、」

「イノセンスだ。お前適合者か?」



イツキは問われて、首を振った。
確証はないが、違うと思った。

神田はイツキの後ろの二人を見遣った。

一人は強い眼差しでこちらを見、一人は喉を押さえて呼吸荒く俯いている。

アレンはコートの前を開き、腰元から眩く光るモノを取り出した。

まさか、とイツキは呟いた。

アレンがソレを手の平に乗せると、まるで意思を持っているかのように、ソレは宙に浮いてアレンの側を離れた。



「っ、…?」



痛む喉を押さえ、ツバキはゆるりと顔を上げる。
更に強く光りを放つソレは、ツバキの目の前で制止した。



「何、コレ?」



ユイは宙に浮くその物体に好奇の目を向けた。
ツバキは魅入られたかのように見つめる。



「ツバキ…?」



ツバキはソレに手を伸ばして掴むと、喉元に強く押しつけた。



「ちょっ、ツバキ!」



ユイがツバキの手を無理矢理引き離すと、そこには光も物体も存在しなかった。
ユイは驚き、ツバキの襟を開いて調べたが、変わった所は何一つなかった ―― まだ、何も。













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