本編

□第二話 招喚
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「異世界ってことか…?」



「まるで夢物語ですわね。信じられませんわ。」



イツキとツバキは目をしばたかせて、彼の言葉に耳を傾ける。



『まあ、物語といえば物語だな。お前らの世界…現世とでも言っておくか。異世界のことが漫画に書かれている。』



ユイは、もう何か悪い夢でも見ているのだろう、と半ば呆れている。
しかしイツキは違った。興味を抱いていた。



「なんて漫画だ?」



尋ねてくるイツキに、彼は感心したように眉を上げた。



『…D-Gray man』



イツキの頭上で豆電球が光った。



「あ、知ってる。幹部の間で今流行ってんだよ、アレ。」



「まあ、そうなんですの?どんな内容ですの?」



今度は、物語やお話が大好きなツバキが興味を示した。


自分の思い通りの展開に、彼は目を細めた。



『人とAKUMAの戦いだ。』



「悪魔ぁ?そんなの架空の存在…」

『現世での悪魔とはわけが違う。死んだ者の魂が呼び戻され、作られたボディに悲しみと共に植え付けられるんだ。』



相変わらず呆れたように言うユイの言葉を遮って、彼はユイの興味をくすぐるネタを引っ張りだした。



「体は作り物なの?」



問うてきたユイに、彼はしめた、と呟いた。



『そうだ。』



スゴいじゃない、と目を輝かせて、ユイは見てみたいと一人思った。



『…ならば、行くがいい。この悲しみと混沌の世界に。』



思い残すことはない、と彼は穏やかに微笑んだ。
三人がここに来て初めて見た彼の表情だった。
しかし、その姿も再度の強い光りに白み、見えなくなった。



「またっ」

「わっ」

「きゃっ」



最後に、と。



『くれぐれも、創造主のことは言うなよ。』



釘を刺すことを忘れずに、彼は消えゆく三人を見送った。














 
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