本編
□第二話 招喚
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眩しさがなくなり、恐る恐る目を開けてみれば。
石で作られた建物が所狭しと並べられ、ひび割れた壁や石畳と人気の無さが、この場所の荒廃を教えてくれた。
「ここはどこなの…?」
三人はキョロキョロと辺りを見回した。
幸い、そこは見晴らしの良い高台だったため、突然移動してきたこの場所を見渡すことができた。
ただ一人、イツキは見覚えのある景色に、いち早く立ち上がってこの光景を目に焼き付けた。
そうして。
記憶と照合してみれば、白黒に描かれたものがあった。
「ここは…、イタリアだ」
「「イタリア!?」」
座り込んでいた二人が驚きの声を上げた。
何故イタリアに。
「人が住んでいないようですが…」
気をつけて、とイツキが言った。
二人は疑問符を浮かべた。
イツキは、神経を張り詰めて辺りの気配を探る。
記憶を辿れば、ここが危険であることが想像できたのだ。
「ツバキ、どうしたの?」
ユイの声にイツキが振り向くと、ツバキが蹲っていた。
「ツバキ?」
「…喉が、痛い…」
オペラ歌手にとって喉は命。
痛みがあるということは、異常に他ならない。
「え、それって、ヤバくない?」
ユイとイツキが見合わせて、眉をしかめた。
《ニン、ゲんダ、ニんゲ、んだ…》
突然、何処からともなく現われたのは、異質なもの。
ガラクタを繋ぎ合わせて中央に顔をしつらえたようなソレは、目の下に涙でも流したかのように黒く筋が入っていた。
「っ!?」
「何コレ!?」
「きゃっ」
《にんゲン、コロす、伯爵サマの、メイれイ…》
可動式の筒が、ぎい、と音を立てて三人に向けられた。
AKUMAだ、とイツキが呟き、咄嗟に二人を庇うようにソレに背を向けた。
― イノセンス発動 ―
《えくソ、しすト、》
またしても突然、今度は人が現われた。
白い髪と黒いコートの、男の子。