ハトアリ小説

□貴方がいれば「満ちる」
1ページ/1ページ

貴方の存在が大きすぎて、また消えてしまうんじゃないかともの凄く不安だった。


貴方がいなくなることが、“一番怖い事”だから。








「アーリースっ!」


後ろから思い切り抱きつかれた。


「ちょ、いきなり何するのよ!?」


いつもなら殴るところだった。


だけど、殴ろうと思ってやめた。


「今日は僕のこと殴らないんですね!


ってことは、このまま抱きしめていていいということですか!?」


私はゆっくりと口を開く。


「・・・別に、いいわよ」


少しずつ強くなる力。


ちょっと痛いけれど、それに心地よさを感じる。


(私、ちゃんと此処に存在しているんだわ・・・)




―此処に存在している?




何を根拠に今、そんなことを思ったのだろう。


そんなの、解らないじゃない。


「ねえ、ペーター?


私此処にちゃんと存在している?温もりを感じてる?」


「え」


「私、怖いのよ。


また消えてしまいそうになるんじゃないかって。


今度は、無事に・・・、帰れないんじゃないかって」


私がそういうと、ペーターは私と向かい合わせるようにした。


表情はいつになく哀しげで、それでいて少し怖い顔をしていた。


「アリス、もし貴方がまたこの世界から消えそうなとき。


貴方の意志だけでは戻って来れないのなら、無理にでも連れ戻します。だから、安心して・・・」


私を、壊れるくらい強く抱きしめた。


正直泣きそうだった。


抱きしめられて苦しいからとかでは無く、ただ嬉しかったから。


こんなにも求めて貰えて、嬉しかったから―・・・。


「泣きたいときは泣いていいんですよ、アリス」


優しく耳元で貴方は囁いた。


その刹那、頬に一筋の雫が伝った。


そしてまた、一筋。


(私、こんなに弱かったかしら?)


そう思ってしまう程泣いた。


彼を想い、不安な心を少しでも取り削ごうと。


「ペーター、好きよ・・・」


「はい。僕も好きですよ」


貴方のその言葉が、いつになく耳を撫でた。










(どうです、スッキリしました?)




(・・・ええ、ありがとう)






[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ