ハトアリ小説
□狂いウサギ
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真昼。
私は自室で読書を楽しんでいた。
たまたま見つけ暇つぶしに、と思って読み始めたのだがこれが予想以上におもしろい。
夢中になって読んでしまう。
コンコン...
「僕です、ペーターですよ!入っていいですよね?」
ノック音の後にペーターの声が聞こえると、直ぐに扉が開き部屋へと入ってきた。
私はまだ一言も返事していないのだが・・・。
「ねぇ、アリス。一緒に遊びませんか」
「無理。今、読書中なの」
ペーターの問いに直ぐに答え、私は読書へと戻る。
暫しの沈黙。
その沈黙を破ったのはもちろん、彼。
「僕より本を取るなんて酷いですよ!
・・・じゃあ、見ていていいですか?本を読んでいる貴方の姿」
本から目線を外し、ペーターを見て云う。
「そんなの見ていて楽しいの?」
心の底から思う。
人が読書をしていて楽しいなんて云う人なんてそうはいない。
「ええ、楽しいですよ。
可愛いアリスの姿が見ていられるんですから。まぁ、構ってもらえないのは寂しいですけど」
・・・そうだ、この人はストーカーで変質者で狂っているんだった。
「相変わらず狂ってるのね、貴方は」
皮肉混じりに彼に云う。
「何云ってるんです、アリス?
僕を狂わせたのは“貴方”ですよ」
そう云って少し悪戯っぽい笑みを浮かべるペーター。
そんな彼に不覚にもときめいた私も、ペーターに劣らないくらい狂っていると感じた。