‡モノクロ×アリス‡
□ー神出鬼没者ー
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「じゃあ私は本を取りに戻るから、アリスは待っとくんだな」
「分かったー」
「…目がヤバいわよ?」
ラリった目を姉に向けて手を上げ、元気よく返事をする。姉が見えなくなると、ギンッと一気に白目に早変わりしてほくそ笑みを浮かべる。
《よっしゃ! その間にまた寝るとすっか! どうせ戻るの遅いだろアイツ…》
実の姉をアイツ呼ばわりするアリスだが、すぐに普通の瞳に戻り空を見上げ、ある小さな願望を心中で呟いた。
「………………」
あーぁ…
何か面白い事ないかなぁ…
白い雲が所々に塊となって横に流れるのをただぼーっと眺めていると、空の遥か彼方になにか小さい物体が現れた。
(………? ………何だろう…あれ…)
カサッとアリスの背後の草むらから小さな音がしたが、ぼーっとしていたアリスはその音を聞き逃してしまい、ジッと小さな点を眺める。
「……………?」
あれ?
なんかあの点、段々近づいてきてるような…。
おまけにゴオって変な音が聞こえるし。
ぽけーっと口を半開きにしたまま近づいてくる物体を一点集中していると、黒い物体から徐々に黄色い髪と肌色の肌、にんまりと笑う口が姿を現した。
その一つ一つのパーツをよくよく見ると、黒い物体はシルクハットだと気付いた。
人の姿だと認識したと同時に、空から物凄いスピードで人が飛んできた事になるのだが、アリスは起きたばかりの思考からか、何も不思議に思わずただ目の前でフワリと停止する人物を見つめていた。
「こんにちは。アリス」
目の前でシル
クハットを手で抑え、浮いたまま挨拶をされた。
綺麗に透き通った男の声。
艶のあるゆるふわな金髪だが、肩にギリギリかかるぐらいの長さで前髪が長く目が隠れていてよく見えない。
それでも口は笑っているので、目が見えなくても表情が読み取れた。
姿格好もどこか癖があり、白い長袖の上から茶色く短めの薄い布のよいな物を羽織っている。それに青い長ズボンに挟まれているのか、コートの裾のような白いひらひらがある。
どうやって浮いたまま停止しているのか分からないが、首に下げてる金の懐中時計が僅かに光を帯びた。