連載パラレル@
□俺は…〜玉響(後編)〜
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「…高杉…」
「っ…お前は喋んな…」
「佐野の母親。何でソイツの所に回さねーんだ?」
「母親…?」
母親がいるなら、何故佐野君は一人になったんだ…?
訳が解らない
世界が違いすぎる…っ
「知らねーよ…」
「高杉!!」
「っ煩ぇえ!!」
普段声を上げる事など皆無に等しかった銀時さんが、声を上げて男の名前を呼ぶ
すると、男は怒鳴り声を上げながら部屋を走り出た
「チッ…俺ちょっと出掛けてくるわ」
それだけ言い残すと、走り出た男の後を追うように部屋を飛び出す
二つの足音が聞こえる中、僕は無性に悲しくなった…
佐野君の母親が彼を見捨てなどしなければ
国を動かす政府がもっと世の中に目を向けてくれれば
僕がもう少ししっかりしていれば……
「佐野君……っ」
訪れようとしていた彼の幸せは…砂の如く、その小さな手からすり抜けてしまった……
悲しい。
悲しいのに涙が出ない。
悲しいと言うよりも…それを越えた虚無感が心を締め付けていた。
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