精煉の道

□好きという感情
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『好きの一番を、君にあげる』






『大好きの気持ちを、お前にあげる』









《好きという感情》









《蒼い鷹》宿舎。


ディオンとフェルナンドは、訓練の後でくたくただった。


明日はたまの休日で、そのため、いつも以上に大佐たちにしごかれたのだ。


「うー……疲れた」


「……そうだね」


ソファーに沈んで天井を仰ぐディオンに、いつもより低い声でフェルナンドが応えた。


ディオンは、ちらりと隣に座るフェルナンドを見る。


……なんか、機嫌悪くないか? こいつ。


『お疲れさまー!』


『はい、タオル』


アッシュとシュネーが、訓練で疲れている二人にタオルを渡す。


「ありがとう」


そう言って受け取るフェルナンドには、いつものほんわかした笑みが見られない。


『どーしたの、フェルナンド。元気ない』


シュネー小首を傾げてみるが、フェルナンドはなんでもないよと言って笑った。


しかし、その笑顔にはかすかな苛立ちが見える。


ディオンは考えた。


……俺、何かしたか?


訓練中は、何でもなかったはずだ。


いつものように、二人で大佐たちに射撃の訓練を受けていた。


その時は、まだいつものほんわかした笑みを浮かべていた。


ディオンは首を傾げて悩む。


あるとしたら、訓練の後………。


「……あ」


ふと、ディオンは思い立った。


ちらりとフェルナンドを盗み見る。


顔を俯けているので、フェルナンドの表情は窺えないが、それでも雰囲気が怒っているのは判る。


ディオンは苦い顔をした。









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