精煉の道U
□KISS or KISS
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《KISS or KISS》
「んっ……ふ、んンっ……ちょ、まっ……あっ…!」
呼吸ごと奪うようなキスに、苦しくなって抗議する。
キースの膝の上に向かい合わせで座らされている格好のまま、キスのせいで上気した頬と潤む紫の瞳で彼を見た。
「なんだ」
「いや………中将って、キス好きなの?」
「何故だ?」
「だってさー………その、―――より、キスする回数の方が多いっていうか」
「何より多いって?」
「あー……だから、その………ックス……」
「聞こえない」
「っ! 中将、わざとだな!」
「まさか。で?」
「〜〜〜っセックス!」
羞恥から半ばやけくそで言い切った。
それこそ毎日、彼とキスしない日はないくらいで、それと比べると身体を繋げることは緊急任務がない時、週に二、三回くらい。
場所はわきまえているとは言っても、会えば必ずキスされる。
ついでに言うと、行為の最中にするキスの回数も結構多いと思う。
「嫌なのか?」
「嫌じゃない」
「なら、何か問題が?」
至っていつもと同じ無表情のままだけど、じっと見つめる薄青の瞳にわずかに面白がっている色を見つけて、ディオンは思わずちょっとムッとした。
「問題っていうか……」
「はっきりしろ」
容赦なく促してくるくせに、その声音はとても優しくて、彼のこんな声を知っているのはたぶん自分だけだと思うと、ディオンの中には優越感に似た感情が広がる。
「ディオン?」
促すように名前を呼びながら、額や頬、顔中にキスされる。
なのに器用に唇だけは避けているあたり、さっさと答えろということだろう。
「だってさー………」
考えたことを口に出そうとして、その恥ずかしさに寸前で口を噤む。
「言いたいことがあるなら言え」
親指の腹で下唇をなぞられ、ちゅっと軽いリップキス。
「んっ………中将、キスうまいから、さ………あんまり毎日されると、くせになりそうで……」
真っ赤になってそう言うと、キースは珍しく軽く薄青の瞳を見開いた。
かと思えば、口の端が愉快そうに上がる。彼が笑むのは珍しい。
「なら、癖になればいい」
そう言って、今度は深い口づけをされた。
「ふ、ぁ……んぅ…っ……は、ぁ……んン……っ」
唇を割って侵入してきた舌が、我が物顔で口内を這う。
くすぐるように舐められ、気持ち良さからディオンは自分からも舌を絡め返した。
さらうように深く絡め取られ、舌と舌をこすり合わされ、卑猥な水音が響く。
口端からどちらのものともわからない唾液が零れ、ディオンの顎を伝った。
「はぅ……っん、はぁ……はぁ……」
銀の糸を引いて互いの唇が離れると、ディオンはとろんとした瞳でキースを見つめ、荒い息を吐いた。
「ん……やっぱ、中将ってキスうまい……」
「お前はまだ下手だな」
「……悪かったね」
「悪いなどとは言っていない。それに―――」
真顔って言って、
「私はとっくに、癖になっている―――」
耳元で囁かれたその言葉に、体感温度が一気に上昇。
「っ……中将、なんかエロい」
「何とでも言え」
再び合わさった互いの唇の熱と感触に、ディオンは無意識に目を閉じた。
(やっぱ、気持ちいー……)
――――――ああ、俺も、とっくに癖になってるみたいだ。
Fin.
あとがき。
キースがキス魔になりました。
あっれー、スランプか?
二人は常にいちゃラブしてればいい。
でもまあ、相手がキースなので公私混同はあんまりしないと……いや、してても面白いかも(笑)。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!
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