精煉の道U

□ある日の執務室
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《おまけ》






秘書官は、扉を開けた瞬間硬直した。


………これは、幻覚だろうか?


上司である陸軍中将の執務室へ、追加で来た書類を届けに来て見たもの。


正直最近の中将は仕事のせいかイライラしているようで、内心では追加なんて持っていったらさらにその機嫌が悪くなるだろうと若干怖かったのだが。


「……クラウド殿?」


秘書官の予想に反して、執務室には何故か黒髪の少年がいた。


おまけに、本来執務机に向かっているはずの中将は、その少年の膝の上に頭を乗せて――――寝ている。


「えーと……あの……?」


困惑した様子の秘書官に、ディオンは「しー」と唇に指を当て、


「もうちょっとだけ、見逃してくれませんか?」


と小さく笑った。


「え? あ、はい……」


反射的に答えて、秘書官はそのままパタンと扉を閉める。


(膝枕……あの中将が膝枕………)


仕事中に、あの人のあんな姿をおよそ見た事がなくて、秘書官は軽く眩暈を覚えた。


そしてハッとする。


「……書類、置いてくればよかったですね……」


見下ろした自分の手には、中将に渡すはずだった書類の小山。


しかし、もう一度中将の執務室に入る勇気は、秘書官にはなかった。


「後でも、いいかな………」


ぽつりと呟いて、彼はその書類を持ったまま自分の執務室へ戻って行く。


それにしても――――、今見た事は、きっとしばらく忘れられない。


秘書官は笑っていいのか困惑していいのかわからないまま、小さく溜息をついたのだった。









おまけFin.







ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました!






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