精煉の道U

□ある日の執務室
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キースは思わずデスクから離れてディオンへ近寄る。


「ディオン……どうした?」


取り敢えず中に招き入れると、彼はどこか窺うように、


「その……中将、元気かなって」


と言った。


内心の嬉しさを隠して、キースはわずかに首を傾げる。


そうすると、ディオンはちょっと心配そうに眉を下げ、


「だって、最近ちゃんと会えてなかったし、なんか、元気ないっていうか……疲れてるみたいだったから……」


若干キースから視線を逸らせながら、ボソボソと呟くように言った。


(心配、してくれたのか……)


キースの胸に、じわじわと温かいものが広がっていき、それと同時にわずかに頬も緩む。


「ディオン、ありがとう」


心配して、普段は遠慮しているのか来ない執務室まで様子を見に来てくれたことが嬉しくて。


キースは、ディオンの顎に手をやり上向かせると、触れるだけのキスを送る。


途端に真っ赤になって「……中将…っ」と声を上げる愛しい子に、心の中では笑みが絶えない。


もう一度、愛しそうに瞼の上に口付けると、ディオンは頬を朱に染めたまま、


「中将、大丈夫? ちゃんと寝てるの?」


誤魔化すように口を開く。


「ん? ………そうだな」


ディオンの問いに、キースはふと思いついた。


「ディオン、ちょっと来い」


扉の前で立ち尽くしていたディオンの手を引いて、執務机の前にある応接ソファの端に座らせる。


不思議そうな顔で、それでもディオンはキースのなすがままソファに座った。


と―――、


「え、わっ?」


キースは唐突に、ソファに座ったディオンの膝に頭を乗せてソファに寝転がる。


いわゆる膝枕という状況に、ディオンは引いたはずの頬の熱が戻ってきた。


「ちゅ、中将?」


「……少しだけ、寝かせてくれ」


戸惑ったようなディオンにそう言って、キースは彼から顔を隠すように身体ごと反対側を向いて、そのまま目を閉じてしまう。


ディオンには、上から見たキースの横顔しか見えない。


(気持ちいいな……)


キースは目を閉じたまま、徐々に身体から力が抜けていった。


まだ成長期で、硬すぎず柔らかすぎない、心地よい感触。


ズボン越しでもじわじわと伝わってくる心地よい体温に、キースはホッと安堵を覚えた。


そのまま、束の間の眠りに落ちる。


(やはり、本物のほうがいい……)


眠りに落ちる寸前キースはそう思ったが、それでもやっぱり後でカイルには礼を言っておいた方がいいかもしれないと考えた。


「………中将?」


いつの間にか小さく寝息を立ててしまった年上の恋人に、ディオンはそっと遠慮がちに声をかける。


返事はない。本当に寝てしまった。


上から見る横顔は相変わらず綺麗だったが、安心したような顔にどこか疲れの色も見えた。


ディオンは、頬を緩めてそっと優しげに笑む。


「おやすみ……」


小さく囁いて、愛しげに真珠色の柔らかな髪を撫でると、寝ているはずのキースが少し笑ったような気がした。


(様子見に来てよかった)


普段は、仕事の邪魔をしたくなくて執務室には来ないディオンだったが、今日は来てよかったと思う。


こんな風に甘えてくるキースはめったに見れないのだ。


(もっと甘えてくれてもいいのに……)


自分ばかりいつも甘えさせてもらっている自覚のあるディオンは、内心で少し苦笑する。


けれど、寝ているキースを見る紫の瞳はとても優しく、愛しげで。


優しく真珠色の髪を梳く手はそのままに、彼が起きるまでこのままでいようと、ディオンは柔らかな笑みを浮かべて目を閉じた。











――――そんな、ある日の執務室。









(カイル。あの写真、まだあるのか)(ん? おぉ、まだいくつかあるぞ。いるか?)(……………くれ)








Fin.




あとがキング←


たまにはディオンに甘えるキースさん♪
何かもうキャラ崩壊してる気がするけど、気にしない!!
だって膝枕書きたかったんだもの!!!←
あと、写真ネタ。


好きな人の写真て、見てるだけで幸せだーって思うけど、そうなると今度は本物に会いたくなるのが常ですよね♪♪




おまけ→






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