精煉の道U
□傍にない温もりが、どうしようもなく恋しかった
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夜に染まった空の下、広く、どこまで続くのかわからない白い砂礫の荒野。
大好きな彼は。たった一人、ディオンが愛した彼は。
あの後目覚めたときには、すでにどこにもいなかった。
「キース……」
彼の名前を呟いても、応えてくる本人がない。
目覚めたときに空だった隣りの空虚さに、ディオンは知らず目頭が熱くなる。
「どうして……」
――――置いて行ったの?
今、彼に聞きたいのはそれだけだった。
どうして置いて行った。どうして何も言ってくれなかった。
どうして―――あの時に、「どこにもいかないで」と言った時に、頷いてくれなかったのだ。
今、隣りにいない温もり。
任務の間に離れていても、心はいつも彼のところにあったから、こんなに苦しくなることも、怖くなることもなかった。
けれど今はどうしようもなく苦しくて、怖かった。
――――彼の心が、見えない。
彼がいなくなってから、あの夜感じた違和に、「ああ、このことだったんだ……」とディオンは思った。
あの違和感は、ただの―――自分の不安だった。
そしてその不安は、最悪なことに当たってしまったのだ。
今、彼は隣りにいなくて。傍に行きたくても、どこにいるかわからなくて。
「キー、ス……っ」
胸を押さえて、小さく嗚咽する。
あの夜彼から与えられた赤い花は、もうすっかり薄くなっていて。この痕が消えたら、本当にもう彼に会えないような気がして。
ディオンはどうしようもなく、怖くなった。
自分は今、父や祖父、ほかの仲間たちと彼を追っている。
だというのに、不安は消えなくて。
―――このまま失うのが、何より怖かった。
置いて行かれたことも、何も言われなかったことも怖かった。
けれど、もう二度と会えなくなるのかもしれないと、心の奥底で幼いころの自分が泣いていた。
目の前で失った母。自分を見て微笑んで、目を閉じたまま、もう二度と会えなかった。
「愛しているよ」と言った父は、そのまま帰って来ずに。十六になるまで、ずっと死んだと聞かされていた。
人は唐突に失うもので。次があると、当たり前のように思っていることは、実は当たり前ではないのだ。
そのことを思い出して、ディオンはその場にうずくまった。
「キー、ス……キース、キース…っ……キースっ!」
いつの間にか溢れてきた涙に、ディオンは小さく、叫ぶように何度も彼の名を繰り返した。
こんなに、好きなのに。傍にいたいと、傍にいさせてほしいと思っているのに。
彼は今、ここにいなくて。
「キース――――っ」
名前を呼ぶことしかできない自分に、どうしようもない怒りと、言いようのない悲しみが渦を巻いて心を侵した。
たったひとつ。うなずいてくれるだけでよかった。
傍にいさせてくれるだけでよかったのに。
それさえあなたは、許してはくれなかった―――――。
(大好きなあたなの心が、今は滲んで、何も見えない)
Fin.
懺悔です**
いや、なんつーか、唐突に思いついたものでした(汗)
ああっ、ごめんなさいっこんな駄文書いてごめんなさいっお願いですから石投げないで!!
切甘っぽいの書きたかったんです!
ディオンはきっと、感覚的にキースがいなくなるってことに気付いたと思うんです!
だってほら、いろいろ身体能力は野生児並みとか言われてるし、あとは愛の力で!!!
いろいろねつ造しててすみませんでしたぁああ―――!!……………!!(←言い逃げ)
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました!
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