Dragon

□穏やかなる愛憎
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私は情事後の余韻をひとしきり味わった後、まだ奴が眠る(気絶しているとも言う)寝台から音も立てずにスルリと抜け出す。

素足のまま床に足を付けると一瞬冷たさに身体が強張るが、気にも止めずにそのまま窓の側まで歩み寄り、ブラインドの隙間から光が零れているのを見とめると調整部分のツマミを半分だけ捻り暗かった室内にほんの少しの光を入れる。

薄暗く、どこか湿気を帯びた様な8畳ほどの部屋にあるのはダブルベットとその枕元にある簡易な棚だけで他には何も無い。

窓から差し込んだ光が眩しかったのか、奴が寝台の上で身じろぎしている。しかし未だに覚醒までには到っていないのか、意味不明な言葉を発しながらシーツを手繰り寄せ顔を覆うような仕草をする。実際には上手くいっておらず、いつも掛けている眼鏡(奴の本体)が無いせいかどこか幼く見える顔は光に晒されたままなのだが。

窓に背を向け寝台に近寄ると私で影が出来たのか、眉間に寄っていた皺を潜め再度穏やかな寝息をたてて眠りの底についてゆく。

−−なぁガユスよ…
お前は気付いているのか?
どれだけ私がお前を愛しく思い、

どれだけお前を憎く思っているのかを−……
私の心をこうも揺るがせるお前が憎い。

−−−なぁガユスよ
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