《‡NARU受小説(パスワなし)‡》

□色とりどり□(サスナル)
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ごった返す店内で、サスケは一口アイスコーヒーを含んだ。

夏のフェアで限定商品が安くなってるとか。
サクラに無理矢理引っ張り込まれたドーナツ屋だが、生れつき甘いものが受け付けられないサスケとしては、口に運べるものといったら苦いコーヒーしか無いのだが、サクラの目当ては今の時期だけプレゼントされるグッズにもあるらしい。

ピンク色したかわいいアイテム欲しさに昔のマンセルを引っ張って来てるあたり抜目ない女子の一人と言った所だが、女子に誘われる事なんてめったにないナルトにとったら、こんな甘ったるいファンシーな食べ物でも目をキラキラさせてショーケースを眺めまくるに相応しい場所のようだった。


長蛇の列を攻略して購入した金額のポイントは、すべてサクラに吸い取られるだけだって言うのに、ナルトはワクワクするきらびやかな食べ物に心踊るらしい。

サスケをテーブル番に残して二人、列に並ぶ姿はサスケからしたらアホ以外何者でもない。
まあ、ナルトにとってはわかりやすい程わかりやすい女の子は大事にしなきゃ精神ゆえ、苦労でもなんでもないのだろう。


時々、一人席かと間違えた女性客からの相席申し込みを断りつつ、サスケは何となく客達を見渡した。

「夏だから」か、刺激的なファッションが多い。
服装だけでなく男も女もきらびやかな光り物で飾り、髪も瞳も人工的なカラーで染め上げている。
里を抜ける前はそんな流行もなかったと思うのだが、亡き三代目の「忍びも人らしくあれ」という意思は五代目によって女性らしい文化を開花させたようだった。
おそらく上層部の長老達はなげかわしいと目を被いたくなるのかもしれないが、このカラフルな世界は浮き上がっていたナルトの異相を目立たなくさせるには充分で。
以前だったら金髪頭の碧眼小僧は、こんな店内に入る事すらかなわなかっただろうに。

だんだんと、ナルトとサクラの順番が回って来る。
いろとりどりの髪をした中で、ひょっこり動くナルトを見つけるとサスケは素直に綺麗だとおもった。

ナルトはきれいだ。
地色を無理矢理抜いて染めたような金色とは全然違う金色。
陽に当たれば透き通り、影が重なれば蜂蜜のような艶をみせる金髪は、大きな瞳の碧に負けない印象を与えるのだ。
全く手入れしていないからこそ、いたずらに髪を痛めていない光の輪があり、指先ですいてみたらどんな感触なのだろうかと想像させる。
短く切りそろえた毛先はつんつんと立ち上がっているけれど、ゆらゆらふわふわと動くしなやかさは濡れればしっとりと重く頬にかかる事をサスケは知っている。

ふいに、ナルトがこちらをむいた…気がした。
が、向いたのはサクラに対してで、次は何を食べたいだのと唇を読めばわかる単純な内容に、サスケは一人苦笑した。

笑顔もきれいになった。
ただいたずらっこだったあの時とは随分違う。
相手をおもいやる笑顔は、きれいで、きれいで。


サスケはアイスコーヒーを一口飲んだ。

…こんな、色とりどりな世界も、悪くはない…。



.end.
>>次のページはにゃるの独り言なので気にしなくていいです。
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