《‡NARU受小説(パスワなし)‡》

□きっかけ□(サスナル)
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雪の国だった。

任務は終わっていた。

あとは木の葉に戻るだけという日に、大雪が降った。

出発は午後に延期。
突然の自由時間に、二人部屋だったナルトとサスケはなんとなく、あの真っ白な世界に行ってみたいなってばよ。じゃあ行ってみるか。ということになって、半分雪かきが終わってた歩道をザクザク歩いて近くの湖へ出たのだった。


木の葉にも雪は降るが、ここまで深い積もり方はしない。

湖一面は結氷し、朝一番のふかふかの雪で覆われた水平は、まるで見渡す限りの粉砂糖の表面みたい。

「わぁあ!まっぶしぃーーーーっ!;」
「…だな…;」

綺麗と言いたい所だが、頭上から来る午前の太陽光が雪面に乱反射してまともに目を開けていられない。
光から目を背けたくても目の前で強烈なライトアップをチカチカ振り回されてるみたいで逃げ場がない。

サスケは眉間をしかめ瞼を薄く開く事で、光の容赦ない侵入に耐えられているようだったが、碧い目のナルトにはキツすぎる光線で。
右手で両目を覆い隠しサンシェードがわりを作らなくては前に進めない状態の真っ白過ぎる風景は、綺麗を通り越して軽いホワイトアウトの世界だった。

雪姫が、世界を結局雪に戻したのは、やはり雪慣れした国民の為なのだろう。
雪がなくては交通機関であるソリも動かないし、はき慣れたブーツだって厚ぼったくてはいていられないといった逆苦情は、あんなに憧れていた春をたった一週間ほどで終焉とさせたのだった。

どっさり積もった雪の中、湖の一画で歓声が上がっている。
二人は、何があるのか声に引かれ、どちらともなくその方向へ歩いていってみるとそこには、湖岸の埠頭をリンクがわりにして雪遊びに興じている家族が沢山いた。
氷の上に立ち、雪合戦をやる子もいれば、幼い子供と一緒に雪だるまをつくっている親もいる。

「わぁあっ!!!!!! すっげー!湖の上にたってるってばよ!」

まぶしくてたまらないといったしかめっ面をしていたナルトが、湖面の氷上で遊ぶ様子に目をきらきらさせる。
立ってるというより乗ってるなんだけどな…と、表情でツッコミを入れてるサスケを他所に、自分も早速その場に加わろうと踏み出した横で、ピルピルピーッ!とホイッスル片手に警備員が駆けて来た。

「氷の上に乗らないでください!氷が薄いですから湖に落ちます!危険ですから皆さん直ちにここから立ち退いてくださーい!!」

なるほど昨日まで春だった陽気では、完全結氷も怪しい場所があるのだろう。
氷は厚く凍っている物だという常識しかない雪国人には驚きにちがいない。
氷に乗れるーっ!と勢い込んだナルトの前で、ぞろぞろと陸上に引き上げ出した家族連れの姿は、金髪頭の背中をがっくりさせるに充分だった。

「残念…ってばよ…;」
本当に声までがっかりしている。
「落ちてもいいなら乗ってこい。」
「やーだー。」
「じゃあしょうがないな。」
「うん…。」

がっかりしているナルトだったが、ふと彼の視界に小さな小さな埠頭が入った。
「なぁ、あれってば何?」
きょとりと小首をかしげ、指差す。
「ああ…防波堤。と、船がぶつかんねーように目印の燈台みたいなもんだな。」

湖も、巨大になれば凪が立つ。
小舟がその波にやられないよう本当におもちゃみたいな防波堤が、雪に覆われもっこりとしたかまぼこみたいに湖の一画にせり出していて、それがナルトの興味を引いたのだった。

「なぁなぁっ あの先っちょいけるかな?」
「いけるだろ…。」
「いきたーい!」
「…行けばいいだろ…。」
「よっしゃ!いくってばよ!」

氷に乗っていた家族連れには、当たり前の光景だったのかナルトの進むさきは未踏のうぶ雪。
雪もかいてない歩道程度の幅しかない防波堤は、ざっくざっくと初めての足跡をつける快感にもってこいだった。

「あっひゃーーーーーー!vvvv」
おもいっきりももを持ち上げ踏み出さないとハッキリした足跡はつかない雪深さ。
なのに見渡す限り真っ平らな湖面の真白さは、何物のの障害もない喜びに溢れる。
後ろに続くサスケからしたら、アホが雪かきがわりになってくれて歩きやすい程度の事なのだが、ナルトは全身で喜んでいるようだった。
ざぶざぶと雪を踏み、燈台代わりのちっちゃな反射板の脇に立つ。
つるりと滑ればそこは湖といった場所は、どこまでが安全でどこからが危険なのか見分けがつかないスリリングさもあって、ナルトはぞくぞくっと背筋を震わせたのだった。

「すげーよサスケ ここからの眺めってばなぁーーんにも邪魔がないってば!」
「そーだな…」

ふたりっきり、湖の上に立つ。みたいな感じ。
まるで空を飛んでここに降ろされたみたいな足場の悪さ、踏み出せない氷の白さ。
誰もここまで来ようとしない静けさも、雪が総て吸い込んでしまってるようだった。

「すっげーよすっげーよv なぁなぁサスケっ しゃがんでしゃがんでっ」
「…ひっぱるな…」
「見てみてっ!」
サスケの防寒着を容赦なく引っ張るナルトにサスケも同じ様にしゃがみこむ。
ナルトの指差す方向は相変わらず同じ風景だったのに、低い位置に目線が下がった途端、その白に空の青さが上半分割り込んで来た。
「なんか、ユーダイって感じに変わらね???」
「雄大って言え…。」
このウスラトンカチ頭にそんな単語があったのかというほうにサスケは感心したのだが、たしかに言われる通り、立ってみていた世界は違った物に見えた。

「…すごいな…。」
「だろーv」
「ああ…。」
「………うんっ…。」

そのままぼやーっと同じ方向を見る。
しゃがみ込んだままおんなじ体勢で同じ風景を見る。
目が慣れて来ると、誰も踏んでいないと思っていた雪面にはちっちゃな足跡がぽつぽつあった。

「猫だってばよー。」
「猫か…。」
「猫ってば軽いから、湖の上近道したんだな。」
「そーみてぇだな。」
「くふくふくふくふv」
「…想像してわらってんな。」
「だぁってよ〜 きっと猫ってば『ちかーいっv』って思って歩いたんだとおもうってばよ?」
「いや 踏み出してみたら思いのほか深くて苦労したかもしんねーぞ。」
「ぁ〜ぁ〜、わかるわかる!『埋まるーっ!;』っておぶおぶしたかもしんねーなっ!v」
「でもってやっと脱出したとおもったら雪で首から下がビタビタになってるに違いない。」
「あっはっはっはっはっはっは!!!!///」
「…かわいいな…。」
「うんうんっ かわいいな〜〜〜〜v」

ぽやーっと同じほうを向いて、ぼやーっとそんな会話を交わす。
可愛いなと同調した所で、あれっ?っとナルトは思った。

『サスケってば?』

ついて来て。なんてなんて言ってない。
一緒に行こうとも言ってない。

のに、いる。

ただ自分がこのめんどくさい場所に行きたいなと言っただけなのに、行けばいいんじゃね。と突き放したサスケは着いて来てくれている。

『あれ?サスケってば???』

横に、いる。

綺麗な横顔、綺麗な黒髪。
瞳が時々赤く染まるけど、真っ白い景色にサスケの艶やかな黒い髪が少しそよいでナルトは思わずちらっと存在を確認してしまったのだった。

『あれ?あれっ??』

…サスケってば、やさしい…???

途端に、どきりとした。
ちょっとばっかり頬がかぁーっとなって、ナルトは「あーっ ぁーっ!;///」と立ち上がった。

「なんだ、ウスラトンカチ。」
サスケが見上げる。
もういいのかと言わんばかりの態度で立ち上がり、帰るぞ。と背中を向けた。
見れば、ナルトが一生懸命ハッキリつけた足跡は、後から続いてたサスケの足跡できれいになぎ壊されていて。
そう、まるでラッセル車のように。

さくさくと、足が前に進む。
サスケの足跡が、ナルトを楽に歩かせて。
ちょっぴりだけ高い背中が、気がすんだかドベと言う様に、乱反射の中で揺れていた。


.end.
>>次のページはにゃるの独り言なのでほっといてもいいです。
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