。* 遙かなる時空の中で *。
□藤の香に惑わされて
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何を?という疑問が音になることはなかった。
優しい口付けが降ってきたから。
優しくも長い口付けに息が苦しくなり眉を潜めればそっと離される。
『………ごまかしましたね?』
「何のことか私には分からないね」
『…今は龍の神子殿の元へ赴いている時刻ではありませんか?』
息を整えると友雅さんをじとっと軽く睨む。
するとすっ、と頬に優しく友雅さんの指が触れた。
「亜希は笑っている顔の方がいい」
『そういうことじゃ…』
またごまかそうとしている、と眉間にしわを寄せる。
「私が亜希に会いたかったのだよ」
予想していなかった言葉。
――友雅さんが私に、会いたかった?
*