。* 遙かなる時空の中で *。

□霧の中で
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『こんなに歩いたの久しぶりだからね』


確かにだるくもなる、と苦笑する。


そして目の前の霧に首を傾げた。
以前来た時には筑紫に霧などなかったはずだが……


『何で筑紫に霧なん―――っ!!?』


ズザーっと音をたてて斜面を滑り落ちる。


すぐに止まったことからそう段差があるわけではないだろうことはわかった。
それよりも問題は、


『痛っ!!』


起き上がろうと手をつき、力を少し加えれば雷にうたれたような痛みが右の手首から肘あたりまではしった。
落ちた時に右の手首をひねったらしい。


『足じゃないだけまだマシか…』


自嘲がもれた。


『那岐に謝りたいのに会えないなんて、最悪…』


会いたいのに。
無関心そうに。けれど私が笑いかけると少し困ったように返してくれるあの笑顔が見たいのに。





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