。* 遙かなる時空の中で *。

□ひらひら
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身を裂くような寒さの中、草木を掻き分けて小さな少女――亜希は銀世界を進む。

何故こんなことをしているのかと問われれば、至極簡単なものであった。


一年に一度開かれる村の祭りに母親と参加していた亜希。
中心には木の囲いの中でゆらりと姿を変える大炎。
パチパチと鳴る音に時折肩を揺らしながら眺めていた。

しばらくそうしていると熱風を引き金にして、頭がぼんやりとしてきた。
周りの音が遠ざかるような錯覚。

その時だった。

ぱちっと跳ねたそれ。火の粉かと思えばそれは、ふわりと浮上しひらりひらりと漂う。

その様は蝶と同じもの。唯一異なるのは炎の一部をそのまま取り分けたような赤。
幼い亜希は好奇心のままにその蝶を追いかけた。
しかし小さな体は森の中を進むには不便だった。
進めど進めど銀世界。






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