。* 遙かなる時空の中で *。
□抱えた闇は
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まって!! まって!! ねぇ……おねがいだから……っ まって!!
「………!……………亜希!!」
声が、聞こえる。
私の名前を呼ぶ声が。
『…………ア、シュ』
頬を伝う涙に邪魔されながら、重たい瞼を薄く開けて褐色の肌を持つその人の名を呟けば彼はゆっくりと息を吐き出した。
「よか…った……」
アシュヴィンは亜希の髪を優しく梳き、一房手にとり口付けた。
『ごめん、なさい』
「謝るな。お前が悪いわけじゃない」
『でも……』
尚も言い募ろうとする亜希をアシュヴィンは掻き抱いた。
一人ぼっちが怖かった。
暗闇に一人、取り残される、夢。
幼い時のことほど、恐怖というものは鮮明に深く記憶に刻まれているもので。
亜希は闇が深い夜、一人ぼっちの時には決まって夢を見た。
アシュヴィンはきつくきつく、抱きしめる。
まるでその存在を確かめるように。
『……アシュ』
「何だ」
『こわ、か…っ』
怖かった。とても。
寝室を共にしていた千尋が王座についてからは、部屋を別々にされ、一人の夜を迎えるたびに恐怖が襲った。
夢を思い出すだけで恐怖で体がすくみ、涙が溢れる。
「安心しろ。これからは俺が……」
そっと亜希の瞳に映る涙を指の腹で拭い、額に口付けた。
「俺がお前を守ってやるさ。それが夢だろうと、な」
⇒あとがき